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インナーブランディングの第一歩─社員と共に創る“コアバリュー”策定ワークショップの進め方

2025年06月12日更新

「社員の価値観がバラバラで、企業の方向性が伝わっていない気がする」
「理念はあるけど、現場で活用されていない」
そんな声を、近年ますます多くの企業からお聞きするようになりました。
採用難、人材の定着、現場の自走力──これらの共通点は「価値観の共有」にあります。

そこで、インナーブランディングの第一歩として重要なのが「コアバリュー(共通の価値基準)」の策定です。

本記事では、大伸社ディライトがこれまで多くの企業と取り組んできた実績をもとに、
コアバリューを社員とともに策定するワークショップの進め方と、その成功のポイントをご紹介します。

1. なぜ今、コアバリューの策定が重要なのか?

企業が成長し、事業が多角化する中で、「うちらしさ」や「らしい判断軸」が社内で失われていくことは少なくありません。
中堅BtoB企業では、創業者の思いや現場で培われてきた文化が、拠点や世代の拡大とともに曖昧になる傾向があります。
そうした中でいま注目されているのが、企業としての価値観を明文化し、共通言語として浸透させる“コアバリューの策定”です。
価値観が共有されている組織では、社員が「これは自分で判断していい」と思えるようになり、自走と創意工夫が生まれます。
また、採用活動や人材育成の場でも「どんな価値観の中で働くのか」を明示できるため、ミスマッチの防止にもつながります。
理念やビジョンに加え、日々の意思決定や行動に直結する「価値の基準」を、社員と一緒に策定することが、組織の強さを形づくっていくのです。

2. コアバリュー策定ワークショップの進め方

コアバリューは、経営層が一方的に定めて発表するだけでは定着しません。
社員と一緒に言葉を探り、意味を深め、合意を形成していくプロセスこそが、最大の価値です。ここでは、大伸社ディライトが実践してきた代表的なプロセスを紹介します。

ステップ1|準備:目的の明確化とインサイトの収集
まず最初に行うのは、「なぜ今、価値観の言語化が必要なのか」という目的の明確化です。
経営層のヒアリングでは、創業の原体験や意思決定の軸、これまで大切にしてきた信条を掘り下げます。
加えて重要なのが、社外から見た企業の印象を把握することです。
・長年取引のある顧客に「御社の強みはどこか?」とヒアリングする
・営業メンバーから「お客様に言われて嬉しかったこと」を集める

など、“自分たちが思う姿”と“顧客から見た姿”の重なりの中に、本質的な価値があることが多いのです。

この段階で「経営」「顧客」「現場」という三つの視点を集めておくことで、ワークショップが“共感の言語”に近づきます。

ステップ2|ワークショップ:社員の価値観を引き出す
次に、部門横断で選抜した社員とともにワークショップを実施します。
ここでは、表面的なスローガンではなく、「この会社らしさとは何か?」を問い、引き出す時間が重要です。

たとえば、以下のような問いを使います。
「この会社で働いていて、嬉しかった瞬間は?」
「“この人がいるから会社が成り立っている”と思う人は?なぜそう思う?」
「この会社らしいな、と感じるエピソードは?」

付箋や模造紙を使いながら、体験に根ざした言葉をどんどん可視化していきます。
大切なのは、正解を求めないこと、評価しないこと、拡散を恐れないこと。
この“発散のフェーズ”を丁寧に行うことで、本質に迫るヒントが生まれてきます。

ステップ3|編集:共通言語へと整える
ワークショップで出てきた言葉やエピソードを、編集者の視点で整理し、「社内で使える共通言語」として整えていきます。
このフェーズでは、以下のような工夫が必要です。
言葉を整えすぎて広告コピーのようにしない
現場で日常的に使えるトーンにする
フレーズだけでなく「その背景や具体例」もセットにしておく

たとえば「挑戦」をキーワードにする場合でも、「具体的にどういう行動が“挑戦”と呼べるのか」
「社内で賞賛された事例には何があったか」などを整理しておくと、実務で使いやすくなります。

ステップ4|レビュー:経営層とのすり合わせ
編集された価値観の案は、経営層にフィードバックを求めます。

この段階で重要なのは、「戦略的に目指す方向とズレていないか」だけでなく、「社員にとって誇りに思えるかどうか」という視点です。
ときには、社員の実感と経営の意図にズレが生じることもありますが、それもまた価値ある“対話の機会”です。
価値観をつくることは、組織の言葉の接続点を整える作業でもあるのです。

ステップ5|共有と展開:次フェーズへの橋渡し
完成した価値観は、ただ壁に貼るだけで終わらせてはいけません。
「日々の業務にどう関わるか」を具体的に設計し、現場で活用できる形で共有していくことが、真の意味での“展開”です。

■ 人事・評価制度への連動
・1on1面談や評価シートに組み込む
・「この半年で、〇〇の価値をどう体現したか?」をテーマに対話
・上司が“価値に即した行動”として具体的にフィードバック

■ プロジェクトや業務改善の起案軸にする
・施策の企画段階で「この取り組みは、私たちの価値に沿っているか?」を確認
・社員参加型で「価値を実現する新しい提案」を募ることも有効

■ 採用・育成・社内コミュニケーションへの活用
・採用サイトで明示し、企業文化に共感した人材と出会う
・新人研修で「価値観の体現方法」を考えるワークを設計
・社内報で「価値を体現した社員」を表彰・紹介し、認知を促進

こうした実務との接点を設けることで、社員が自分ごととして捉え、自然と価値観に基づいた行動を取り始める環境が整います。

3. 成功のカギは「拡げる力」と「整える力」

このプロセス全体で重要なのは、社員の内側にある価値を引き出す“拡げる力”と、それを整えて共有する“整える力”の両方が機能することです。

■ 拡げる力(ファシリテーション)
参加者が「こうあるべき」といった固定観念を取り払い、過去の体験や実感を素直に言葉にする。
この発散フェーズでは、良し悪しの判断を排し、感覚や想いを自由に出してもらう問いかけと場づくりが重要です。

■ 整える力(編集)
出てきた言葉やエピソードを、そのままではなく「意味ある言葉」「使える言葉」として整える。

現場での使いやすさと経営戦略の整合性、双方を踏まえながら言葉をデザインしていく工程が求められます。
この2つがうまく連動してはじめて、コアバリューは単なる言葉から“文化をつくる道具”へと昇華していきます。

4. おわりに──価値の言語化は「企業文化の再発見」

コアバリューの策定は、目的ではなくスタート地点です。
言葉をつくることで、企業は自らの価値を再発見し、それを社員や顧客と共有するための共通言語ができます。
このプロセスを通じて、組織が“なぜここにあるのか”“何を大切にしてきたのか”を再確認し、未来へつなげる土壌が整います。
次回の記事では、今回策定した価値観を社内に浸透させ、日々の行動へとつなげていく実践的なアプローチについてご紹介する予定です。

大伸社ディライトでは、コアバリューの策定支援から、社内浸透施策、採用・広報への展開まで、
インナーブランディングを一貫してご支援しています。
「自社らしさを、言葉にして社員と共有したい」「理念と日々の業務をつなげたい」──そんな企業さまは、ぜひお気軽にご相談ください。

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山本 大輔

ビジネスコンサルティング部 部長

山本 大輔

BtoB企業、教育機関のブランディング・マーケティング支援に従事。上流の戦略策定からコアバリュー定義、リード獲得・育成の仕組み構築の伴走支援が得意。 ・保有資格 ウェブ解析士

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