デジタルマーケティング
2018年11月20日
2019年04月10日
「カスタマージャーニーマップを作りたい」「しかし、作り方がよくわからない」「どうすれば有効なカスタマージャーニーマップを作れるだろうか?」このように考えている担当者は多いでしょう。カスタマージャーニーマップは、マーケティングにおいてたいへん重要なはたらきを示すものです。
本記事では、「カスタマージャーニーマップの定義」「BtoB向けカスタマージャーニーマップの作り方6ステップ」「カスタマージャーニーマップ作成後の”落とし穴”」について、詳しく解説します。この点について課題感を感じている担当者は、ぜひ参考としてください。
まず、カスタマージャーニーマップの定義についておさらいしておきましょう。カスタマージャーニーマップとは、一言で言えば、プロダクトやサービスに対する顧客の行動や判断を可視化するための”フレームワーク”です。
顧客がプロダクトやサービスを購入するまで、さまざまなプロセスが実行されます。プロダクトやサービスを認知し、比較検討して、購入を決定し、そして評します。
その中で起きる顧客の挙動を時系列で整理し、自社製品との接点ごとでの明らかにするのが、カスタマージャーニーマップとなります。カスタマージャーニーマップを日本語に訳するなら、「顧客の旅行地図」といった意味です。
つまり顧客がプロダクトやサービスを認知して購入し、評価するまでの流れを旅行にたとえているわけです。それを地図にして可視化するのだから、「カスタマージャーニーマップ」と呼ばれます。カスタマージャーニーマップがあれば、顧客の挙動をわかりやすく把握することが可能です。
上記のとおり、カスタマージャーニーマップはたいへん重要なフレームワークです。しかし、その作り方を理解している人は、決して多くありません。
カスタマージャーニーマップは、以下6つのステップによって作成することが可能です。
上記の6つのステップについて、下記で詳しく解説します。本記事を閲覧しつつ、適切なカスタマージャーニーマップを作成してください。
BtoBカスタマージャーニーマップを作成する上では、第一に目的を明確化することが重要です。具体的には、以下のような形で目的をはっきりさせましょう。
この目的は、企業やプロジェクトによって異なるものです。それぞれの状況を鑑み、適切に設定しましょう。目的は何なのか、なぜ作る必要があるかをはっきりさせておけば、カスタマージャーニーマップの作り方も見えてきます。具体的には、
といったことがわかるはずです。そのカスタマージャーニーマップから得られる情報は、企業にとってたいへん価値のあるものとなります。
一方でカスタマージャーニーマップを作る前段階で、目的が明確でないことは、大きな問題となります。目的が明確でなければ、カスタマージャーニーマップから適切な情報を得られなくなるでしょう。
役立つヒントが得られないどころか、企業の行動を不適切な方向へ導いてしまう可能性すらあります。本来は企業に大きなヒントをもたらすはずの、カスタマージャーニーマップ(地図)が間違っているのなら、コンバージョン(目的地)もまた、間違った場所となってしまいます。
カスタマージャーニーマップを作成するうえで目的を明確化することは、作り方のステップにおいてもっとも重要なポイントとなります。目的については、慎重に検討して決定しましょう。
続いて、ペルソナを設定します。ペルソナとは、一言で言えば「プロダクトやサービスの購入者において、平均的な人物像」のことです。
マーケティングにおけるペルソナは、「ターゲット」とは異なります。ターゲットとは、「20代のOL」や「40代の会社員」など、アバウトな形で指定する「自社の目的の対象となって欲しい”セグメント”」です。
一方でペルソナは、より詳細に指定された、「架空のユーザー」といった形になります。ターゲットは存在しますが、ペルソナはあくまでも「平均化された人物像」であり、実在はしません。実在はしませんが、ペルソナの求めるものに回答することが、そのままターゲットをコンバージョンへ導くことへつながります。
BtoBの場合、ペルソナとして設定すべき項目は以下のとおりになるでしょう。またBtoBであれば、企業ペルソナと責任者(裁量権を有する人物)ペルソナ、ふたつのペルソナを設定する必要があります。
<企業ペルソナ>
<責任者ペルソナ>
ただしカスタマージャーニーマップで必要となる項目は、ステップ1で明確化した目標によって異なる場合もあります。目標に応じて、適宜新しい項目を追加するなど、柔軟な工夫が必要です。もちろん、目標によっては、そもそも設定する必要がない項目も出てきます。
ペルソナを設定することで、より正確で効果的な仕上がりになります。ペルソナが明確化されていなければ、カスタマージャーニーマップもまた、明確なものではありません。よってカスタマージャーニーマップの作り方において、ペルソナは明確に設定することが重要です。
また、「ペルソナにはどのような行動を起こして欲しいのか?」も、決めておく必要があります。プロダクトやサービスの購入であるかもしれないし、オウンドメディアの熱心な読者になって欲しいのかもしれません。
ペルソナに起こしてほしい行動を明確に把握しているのなら、カスタマージャーニーマップから得られる情報やヒントはより合理的なものとなります。その状況に応じて、「ペルソナに取って欲しい行動」を明確にしておきましょう。
さらに、顧客行動に合わせてフェーズを設定します。フェーズとは、わかりやすく言えば「顧客の意思決定や行動の段階を区分けし、一連の流れにまとめ上げたもの」です。
そしてフェーズごとの顧客における行動や思考をまとめていきます。BtoBにおけるカスタマージャーニーマップの場合、おおむね以下のような形で、フェーズを設定することとなります。
<顧客フェーズ(横軸)>
フェーズについては、「興味・認識」から「リピート」へ至るまで、大きく分けて6つに分けられるでしょう。ただし目的によっては、よりフェーズを細分化する必要があるかもしれません。
あるいは、必要でないフェーズもあります。いずれにせよ自社の目的に基づいて、フェーズの作り方を工夫することが重要です。
また、設定した目的によっては、フェーズ設定が難しいかもしれれません。その場合はステップ4、「チャネルやタッチポイントを設定する」を先に実施することを推奨します。
チャネルやタッチポイントがはっきりしていれば、カスタマージャーニーマップの対象がどのようなフェーズを有しているか、見えてくるはずです。
顧客行動に沿ったフェーズが設定できたら、「チャネル」や「タッチポイント」を設定しましょう。タッチポイントとは、一言で言えば「プロダクトやサービスなどと、顧客の接点」を意味します。
たとえばホワイトペーパーをダウンロードしたのなら、それは「商品理解」フェーズなどにおける、一つのタッチポイントです。そしてチャネルとは、「タッチポイントが発生した媒体」を意味します。
同時に、ホワイトペーパーを掲載している自社サイトがチャネルということです。タッチポイントとチャネルを設定することで、「いつどこで、顧客は何をしているのか」がはっきりと見えるようになります。
また、注視しなければいけないのは、タッチポイントやチャネルのみではありません。その前後にあった行動についても、考察することが重要です。顧客行動をしっかりと観察することで、のちのちアイデアや施策が思いつくかもしれません。
たとえばプロダクトを購入する直前では、「販売サイトや実店舗を訪れている」、というアクションがあります。このようにして、「タッチポイントのその瞬間だけ」を追いかけるのはなく、「顧客の行動をできるだけ、一連の流れとして掴む」ようにしましょう。
そうすることで、後ほど顧客の挙動をより正確に把握しやすくなります。
次に、顧客の感情や思考について洗い出しを行います。このステップでは、今まで設定してきたフェーズごとのタッチポイントやチャネルなどを参考とします。フェーズごとで顧客が何を思い、どのように考えてきたかを推測することが重要です。
たとえば、「情報収集・商品理解」における「感情」であれば、「これはすばらしい製品だ」「あまり魅力的ではないな」というようなことが見えてくるでしょう。同じように「思考」であれば、「この製品は、自社にとって予算内でおさえられるか?」といったことが思い浮かびます。
こういった形で顧客の感情や思考について、フェーズごと洗い出していくわけです。フェーズごとでの顧客の感情や思考が見えてくれば、施策として何が必要なのか、ある程度見えるようになります。
カスタマージャーニーマップにおいて顧客の感情や思考について考察する場合、いわゆる「ブレスト」が推奨されます。その方法は、決して難しいものではありません。
まず、カスタマージャーニーマップそのものをホワイトボードなどに張り出します。続いて、対象となっているプロダクトやサービスに関係する人物が、顧客の感情や思考について、全員で考察するわけです。
このような形を取れば、より正確性の高いカスタマージャーニーマップを作成できます。なぜなら複数で作成することにより主観が排され、より客観的な顧客の感情や思考を考察できるからです。可能であれば関係者を巻き込み、組織単位で顧客の心理分析に向き合うことを推奨します。
ステップ5までで、カスタマージャーニマップ上で必要となるデータが出揃いました。続いては、カスタマージャーニーマップを元にして自社課題を洗い出します。
顧客の感情や思考を元にすれば、さまざま課題が見えてくるはずです。たとえば、
というような、顧客の心理あるいはペルソナとは一致していない部分が課題として見えてくるでしょう。そういった課題が見えてくれば、おのずと必要となる施策も見えてくるはずです。
注意したいのは、「ステップ1で決めた目的を失念しないこと」。ここで発案される施策は、目的をクリアするためのものでなければ、カスタマージャーニーマップを作成した意味がありません。
他の目的に気を取られないように注意しながら、施策について考える必要があるわけです。目的から逆算して考えれば、より的確な施策が見えてきます。ここまでが、BtoBビジネスにおけるカスタマージャーニーマップの作り方となります。
作成後は、資料として見やすく清書しておくのがよいでしょう。なぜなら、カスタマージャーニーマップについては、マーケティング部だけではなく、他部署にも共有できるから。よくまとめられたカスタマージャーニーマップは、マーケティング担当者でなくとも理解しやすい、たいへん重要な資料となります。
たとえば営業担当者がカスタマージャーニーマップを手にすれば、「では営業時には、この点について強気のトークを展開しよう」などと、ヒントが得られることもあるはずです。また、「カスタマージャーニーマップに書いていることと、営業時に起こっていることが一致していない」といった、照会が実施できる場合もあります。
せっかく作ったカスタマージャーニーマップを、自分の担当範囲でしか使わないのは、非常にもったいないこと。ぜひ、他部署にも参考できるような資料としてまとめ、共有しましょう。
カスタマージャーニーマップを実際に作成してみると、課題は明らかになったものの、「そのためのコンテンツの企画においてはなかなか着手できずにいる」というケースが散見されます。
一般的にカスタマージャーニーマップといえば、最初に認知や行動など、各フェーズにおいてどのようなタッチポイントがあるかを観察するものです。そして、それぞれの施策の結果、どのようなユーザーエクスペリエンス(UX)を与えているかを俯瞰的に確認します。そして、自社が今、「どのフェーズに対して施策を実施できていないか」といった部分までは、比較的容易に到達するわけです。たとえば、
というようなことは、カスタマージャーニーマップから見えてきます。しかしながら、肝心なコンテンツを企画制作するのは、やはり簡単なことではありません。それを継続的に実施するとなれば、なおさらハードルが高くなります。
コンテンツを企画することは、多くの場合に大きな課題となります。しかし、これには一つの解決策が挙げられます。「カスタマージャーニーマップ上にコンテンツ企画の要件まで書き込んでいく」という方法です。具体的には、以下を指します。
コンテンツを企画する上では、特に1.ターゲットにどんな意識、気持ちを抱いてもらうのかが、とても重要です。
そもそも、コンテンツを企画する上では「自社商品・サービスの特長をいかに伝えるか」「競合企業と差別化できる要素をいかに伝えるか」といったことに意識が向けられがちです。もちろん、そういった方向性で企画を進めていくことは、間違った方法ではありません。必要に応じて、それらを伝えて優位性を保つことも重要です。
しかし実際には、自社がそうだと思っている情報でも、顧客にとってはそうではない場合もあります。自社が強烈な魅力だと考えているところにも、「そうなのか」程度にしか思ってもらえず、温度感が生じるのは珍しいことではありません。
余程のUSP(Unique Selling Proposition=競合企業にはない自社独自の強み)があれば、それを伝えることで顧客を振り向かせることができるかもしれません。しかし、成熟化している昨今の日本市場においては、競合企業との差別化は難しくなっているのは事実です。
したがって、今すぐに強烈なUSPを用意するのは、現実的な解決策とは言えません。さらに、たとえ業界内で際立った特長だとしても、それを伝えるコンテンツが適切なものでないと、「比較検討した結果、自社を選んでくれる」というところには到達しづらいのです。
しかし、「何を伝えるか」から考えるのではなく「どのような気持ちになってもらいたいか」を考えれば、このハードルはクリアできるかもしれません。
カスタマージャーニマップの作り方でも触れたように、顧客の心理はフェーズごとで目まぐるしく変化します。フェーズごとでの顧客の理想的な「気持ちの持ち方」を考えます。
最終的にコンバージョンする上では、
といったポジティブな印象、意識、認識をもってもらうことが重要です。でなければ、顧客は自社プロダクト・サービスに関心を持ちません。
つまりコンテンツには、「顧客が自社に対して抱いている何らかの意識や気持ち(=パーセプション)」を、望ましい状態に変化させることが求められます。コンテンツを企画する際に必要なのは、「何をイントロダクションするか」だけではありません。
顧客に抱かせたい意識・気持ちを明確に把握したうえで、「そのために、どのような情報を(=コンテンツ)どういう手段で(=メディア)伝えると有効なのかを考えること」なのです。
カスタマージャーニーマップとは、顧客が自社にとって望ましい状態(たとえば発注)に至るまでのパーセプションチェンジの連続です。「そのために何をどういう手段で伝えると有効なのか」というコンテンツ企画の要件まで盛り込んだ内容になっています。
これが、実際に作成したカスタマージャーニーマップのサンプルです。自社のマーケティングゴール(購入/リピーター化/入会など)に至るまで、顧客の意識がフェーズごとでどのように変化していくのかを描き、各ステージに移行させるための施策(コンテンツ/メディア)を記載しています。
先に述べた3つの要素が盛り込まれていることがわかります。
これらを順に考えていくことが重要です。ちなみにこれは、株式会社電通のフレームワーク「TPCM」に則った手法です。
1.はすなわちTargetとPromotionに該当します。そして2.はContents、3.はMeans(手段)に該当。
このようにカスタマージャーニマップを使って、「何のコンテンツを、どのように発信していくか」が、明らかになります。ぜひ一度、カスタマージャーニーマップ作成後の施策実行のフェーズを意識して、コンテンツの企画までを念頭に置いて、実行してみてください。
カスタマージャーニーマップは、顧客について、プロダクトへの興味から購入・リピートに至るまでのフローを可視化できる、すぐれたフレームワークです。カスタマージャーニマップがあれば、顧客の挙動について、一連の流れで理解できます。
昨今では顧客の行動も多様化し、既存の方法で追跡、分析するのが難しくなりました。また顧客の匿名化や市場成熟の背景もあり、こういった部分をクリアするのは、企業における重要なミッションとなりつつあります。
カスタマージャーニマップがあれば、上記のような局面においても、顧客理解を促進できます。そしてそこから、適切な施策を考案することも可能です。
CXデザイン部 次長
古本 真己ユーザーヒアリングを通じて、Web/冊子/動画などジャンルを問わずコンテンツの企画・構成・編集までを行うコンテンツ企画制作ディレクター。 近年はマーケティングファネル上の課題を抽出し、リード獲得からリード育成まで全体を俯瞰して戦略を立案、施策の実施、成果検証まで一貫して担当。PJT全体をプロデュースから運営・ディレクションまでを担うPMとして参画させていただくことが多いです。