
プロセス改善
2025年03月18日
2026年04月09日更新
「機能は合っている。でも、使われない」
システム開発が完了したにもかかわらず、現場に定着しない——そんな経験をお持ちの担当者は少なくないはずです。ありがちな原因として「UIがわかりにくい」「操作が複雑」といった点が挙げられますが、本質的な問題はもっと手前にあることがほとんどです。_
それは、業務要件が正しく整理されないまま、開発がスタートしてしまっていること。
機能の話をする前に、「どういう業務の流れの中でシステムが必要なのか」「どの部署が、どの情報を、どのタイミングで扱うのか」——この文脈が整理されていなければ、どれだけ高機能なシステムを作っても現場には馴染みません。
システム開発における要件には、大きく2種類あります。
機能要件とは、システムが「何をするか」を定義するものです。「商品を検索できる」「申請をオンラインで完結できる」といった、具体的な機能の仕様がこれにあたります。
一方、業務要件とは、「なぜその機能が必要なのか」「どういう業務の流れの中で使われるのか」を定義するものです。たとえば「申請のオンライン化」ひとつをとっても、誰が申請し、誰が承認し、どの部署にどのタイミングで通知が必要か——その業務の文脈によって、必要な仕様はまったく異なります。
多くのプロジェクトで見落とされているのは、この業務要件の整理です。機能の話ばかりが先行し、業務の文脈が曖昧なままベンダーへの発注が進んでしまう。

「それならベンダーがヒアリングしながら整理してくれるのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかしここに、大きな構造的な問題があります。
ベンダーはシステムを構築することのプロです。一方で、クライアント企業の業務フローや、部署ごとの役割・情報の流れ・縦割りの実態まで深く把握することは、本来の専門領域ではありません。
さらに言えば、ベンダーはシステムを作る立場です。業務の複雑さをそのままシステム要件に落とし込もうとすると、スコープが広がり見積もりが膨らむことになります。そのため、無意識にシンプルな解釈で要件をまとめてしまうことも起こり得ます。
業務要件の整理は、システムを作る側ではなく、業務を知る側が主導しなければならない。それが大原則です。
「自社の業務は自社が一番わかっているはず」——たしかにそうです。しかし、自社内での業務要件整理には、いくつかの落とし穴があります。
業務フローの詳細は、長年その業務を担当してきた人の頭の中にあることがほとんどで、言語化・ドキュメント化されていないケースが多い。担当者を集めてヒアリングしようとしても、「これは当然だ」という前提が多すぎて、抜け漏れが生じやすくなります。
複数部署にまたがる業務では、どの部署の視点で整理するかによって、要件の優先順位や仕様が変わります。社内で進めようとすると、部署間の調整が難航し、要件が曖昧なまま進んでしまうことも少なくありません。
日常業務の中に当たり前として溶け込んでいる非効率や、部署間のコミュニケーションの断絶は、内側にいる人には気づきにくいものです。
ここで重要になるのが、第三者の介在です。
社内の利害関係から切り離された立場で、複数部署に対してフラットにヒアリングができる。「なぜそうなっているのか」を素直に問える。業務の当たり前を疑い、構造的な課題として可視化できる——これは、内部の人間には難しいことです。
分析の際には、単に「業務フローを描く」にとどまりません。役割分担の曖昧さ/承認フローの断絶/部署間のデータ受け渡しの非効率/ボトルネックの所在——こうした観点を軸に業務を構造的に分解することで、表面には出てこない根本的な課題を特定します。
また、要件定義の経験を積んだ第三者が入ることで、非機能要件(セキュリティ・保守・権限管理など)の漏れを防ぐこともできます。機能面だけでなく、システムが安定稼働するための条件まで網羅した要件定義書は、ベンダーへの発注精度を大きく高めます。

「要件定義に時間やコストをかけるなんて、遠回りでは?」と感じる方もいるかもしれません。しかし、実際にはその逆です。
開発が進んだ後で要件の認識違いが発覚した場合、手戻りにかかるコストは、事前の整理にかかるコストをはるかに上回ります。特に規模の大きいシステムほど、後工程での修正は困難になり、プロジェクト全体の遅延や予算超過につながります。
業務要件を開発前にきちんと整理することは、プロジェクトへの保険であり、最も確実なコスト管理の手段です。
システム開発を成功させるために、最初に取り組むべきは機能の選定でもベンダーの選定でもなく、業務要件の整理です。そしてその整理を、利害関係のない第三者が主導することが、精度と客観性を担保する上で非常に重要です。
「自社の業務は自社が一番わかっている」からこそ、外から見てもらうことに価値があります。システムに何百万・何千万という投資をする前に、まず業務要件の整理に取り組んでみてください。そのひと手間が、プロジェクト全体の成否を分けます。
大伸社ディライトには、複雑なプロジェクトの設計・進行を専門とする業務設計のスペシャリストが在籍しています。カタログ・展示会・Webサイトなど、多くの関係者を巻き込む販促プロジェクトを長年にわたって手がけてきた経験から、業務フローの構造的な課題を見抜く目を持っています。
私たちが提供するワークフロー診断は、このブログでお伝えしてきた「業務要件を固める」プロセスを、具体的なアウトプットとして実現するサービスです。

ワークフロー診断では、まず複数部門へのフラットなヒアリングを通じて現状(As-Is)の業務フローを可視化します。その際、単に「業務の流れを描く」のではなく、役割分担の曖昧さ・承認フローの断絶・部署間のデータ受け渡し・ボトルネックの所在——といった観点から業務を構造的に分解し、根本的な課題を特定します。
そのうえで、あるべき姿(To-Be)を具体的に設計します。「改善の方向性を示す」にとどまらず、誰が何をいつ承認するか・どのルールで管理するか・どこでミスが起きやすくどう防ぐか——といった実行レベルの業務設計まで落とし込みます。最終的にはベンダーへの発注仕様として使える業務要件定義書として納品します。
私たちが他と異なるのは、業務コンサルタントではなく、実際の販促プロジェクトを何百件も動かしてきた制作進行のプロがこの仕事を担っていることです。工程全体を俯瞰する視点、関係者間の調整の実務、ドキュメント化・標準化のノウハウ——これらはすべて、現場経験から生まれています。
役割分担/承認フロー/データ受け渡し/ボトルネックの観点で業務を多角的に分析
To-Beを「実行できる設計」まで落とし込む。仕組みの定義・ルール化・ミス防止策まで担う
500ページ超のカタログ制作実績など、複雑な販促プロジェクトの現場経験から生まれた視点
「システム化の前に、まず業務を整理したい」「ベンダーへの依頼内容をきちんとまとめたい」という段階から、ぜひお声がけください。
なお、ワークフロー診断の後も、プロジェクト伴走支援やデータ作成・整備支援といった後続サービスもご用意しています。業務設計から実行まで、一貫してご支援できます。

マーケティングユニットリーダー/マーケティングコンサルタント
古本 真己BtoBリード獲得&育成のマーケ施策設計に特化したマーケティングコンサルタント。得意業界は製造業/医療/大学。他にブランド認知プロモーション、BtoB代理店支援、大学入試広報、新卒採用支援などのテーマも経験多数。 ・保有資格 PMP®(Project Management Professional)