デジタルマーケティング
2017年06月09日
2017年04月20日
2018年から18歳人口が大幅に減少し、大学志願者獲得に大きな影響を及ぼすと言われている『2018年問題』。大学業界に携わっていればこのテーマは誰しもが知っており頭の痛い話ではあるものの、進学率の上昇によって志願者数としては微増傾向の大学が多く、どこか自分ゴト化しきれない人も多かったと思います。
ただ進学率も上昇ストップとなりつつあり、いよいよ待ったなしの状態となってきました。志願者を増やしていくための広報活動には、一定の予算が必要です。その予算確保のための手段として改めて『寄付金』に注目が集まっています。ただ寄付金の獲得を維持していくには『寄付をしたい、この大学を応援したい』といった気持ちを中長期的に醸成していくことが欠かせません。その一番の近道は大学のファンを作ること、つまり『大学に関連するコミュニティを活性化』させることです。
今回は大学にとって継続的な関係を持ちたいステークホルダーとのコミュニケーションを活性化させている事例をご紹介しながら、必要なポイントを整理してご説明致します。
事例1: 立命館大学校友会
立命館大学校友会では同窓会イベントの管理を効率化し、一人一人のユーザーに適した情報発信を行うため、これらを自動で行えるMA(マーケティングオートメーション)ツールを導入されています。上記の導入・運用によって今まで手作業で行っていたメールの発信や受付管理といった手間が省けただけでなく、管理登録している卒業生の状態(前回のイベントに参加してくれたのか、配信したメールを開いてくれたのかなど)によってメールの内容やお知らせする内容を適正化させ、One to Oneのコミュニケーションを実現しています。そういった関係を醸成したうえで、卒業生の気持ちが高まった状態(例:イベントのレポート報告時に合わせて)の時に、ユーザーに負担の無い形で(例:一口金額の少額からクレジットカードで引き落とし出来る)寄付金申請が出来る導線を作っています。
明治大学では全国の父母会サイトをリニューアル。その際に父母会サイトの担当者とサイト制作会社が直接やり取りできる体制とすることで、
●父母会側が発信したい情報の更新頻度の向上(学内の担当者を挟まないスムーズな運営)
●発信した情報の目的と結果の明確化による成果を見据えた情報の最適化
●発信した情報に対しユーザーがアクションしやすい(イベント参加、他サイト誘導など)導線の導出
を達成し『イベントを報告する場』から『大学のコミュニティへ参加したいと思って頂く契機となる場』へと転換しました。父母会サイトリニューアル後は訪問数も大きく増加し、発信する情報の目的を明確にしたことで集客の質も上がり、寄付金の申し込みまで一貫して行えるコミュニティの場となっています。
大学との関係も希薄になりかけたOB・OGの立場にたてばすごく自然なことなのですが、いきなり『〇〇周年を迎えますので、皆さんの寄付金をお願いします!』といった封筒を送られてきても寄付しませんよね?
それと同じでまずはこの大学のために貢献したい!と思って頂くような関係作りを優先させましょう。上記の二事例も寄付金の事についてはほんど述べていません。というのもコミュニティが活性化しないといくら寄付のお願いをしてもユーザーには刺さらないからですし、ファンになって頂いても全ての人が寄付活動を実施してくれるとは限らないからです。
そのため母数を増やし、アクティヴな会員をできるだけ増やしてその方々との関係を育成していくことを大きな目標と掲げているのです。
Webサイト・SNSなどのデジタル領域の施策は、仮説を持って実施した施策や情報発信に対するユーザーの反応が明確に分かり、改善のための施策を効率的に実施出来る手段です。
優先すべき目標を寄付金の獲得に偏らせず、大学ファンの獲得と設定することでWebやデジタル領域の活用幅はグンと広がります。今では大学へ入学すること自体が当たり前であり情報も溢れているため、現在の大学への思い入れが強い卒業生など一部の人たちに向けた広報誌や紙媒体を卒業名簿へ記載している先へ送るのみでは、卒業生や今後ファンになって頂きたい方々へ情報が伝わりにくくなっています。
そこでユーザーが情報を取得している先であるWebサイトやSNSといった場の活用は必須であり、その方々に合わせた情報を発信しながら、伝わっているのか・成果を出せているのかを分析しながら最適なコミュニケーションを見出すことは今後欠かせない施策となるでしょう。
下記に主要なチェックポイントを記載致しますので、自分たちが今どのステップにいるのか、自分たちの大学であればそのステップにどのような要素を追加できるのかといった部分も検討されてはいかがでしょうか?
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1. 魅力的な情報や興味を醸成されるような情報取得先(プラットフォーム)はあるのか
2. プラットフォームの目的や効果指標は設定されているのか
3. 目的に沿った情報発信が積極的に実施され、効果指標の数値が改善されているのか
4. 常にコミュニケーションを取るためのメールマガジンや、情報の流通先(SNSなど)があるのか
※大学の戦略に合わせて、2~4は常にサイクルをしていくイメージです。
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コンサルタント
荻田 勝也デジタルマーケティング領域における戦略策定から施策実行までのプロジェクトマネジメントを担当。 ビジネス成果の貢献に向けて、既存の枠に捉われない新たな枠組みや仕掛けを考え・実現していきます!