2021年08月02日
CX(カスタマーエクスペリエンス)は、マーケティングの世界で広く使われてきた言葉です。
この記事ではデジタル領域に特化して、CXをどのように解釈し、活用していけばいいかということを解説しています。
まず初めに、CXとはなにかということに関して説明します。CXとは「Customer Experience」の略で、「顧客体験」を意味します。ユーザーの購買プロセスだけでなく、購入後のサポートなど、ユーザーと顧客のタッチポイント全てにおいての経験を指します。
顧客の満足を得るためのプロセスとして、以下の図のようなものが考えられます。CXの考え方としては、この図にある項目全ての向上を目指すことで、顧客からの支持を獲得するというものです。この構成は商材や商流によっては、それぞれ変わりますのでそれぞれの会社にあったタッチポイントの設定が必要です。
CXと似た言葉として、UXとUIがあります。これらの言葉は混同されがちなので、その違いについてご説明します。
UXはユーザーエクスペリエンスの略で、ユーザーが製品・サービスを通じて得られる体験を指します。CXとの違いとしては、CXが顧客体験の全般を指すのに対してUXは製品サービスの利用者が、それらを通じて得られる体験を指します。関係性としては、CXの方がより大きな概念であり、CXの中にUXが含まれていると言えます。
例えば、「使う人」がUX、「顧客」がCX。おもちゃで遊ぶのは子供でCX、購入する親や家族まで含むのがUX。CXはターゲットを包括的にとらえたより戦略的な思考なのに対して、UXは1ユーザーに対しての戦術的な思考です。
UIはユーザーインターフェースの略で、ユーザーとの接点そのものを指します。
例えばwebサイトをスマホで見たときに、画面上で見られる全ての情報がこれにあたりますので、色やフォントなどのデザインがこれに含まれます。関係性としては、UXの方がより大きな概念であり、UXの中の構成要素としてUIという言葉があるという関係性です。
前の章でも述べたとおりCXは顧客としての一連の体験、つまり企業と顧客のタッチポイントのことを指しています。CXを向上させることは、企業にとってどんなメリットがあるのでしょうか。
CXを向上させることで、顧客満足度を向上させることができます。
例えば、社内で業務効率化のためのクラウドを導入した場合を想定してみてください。たとえ性能が同じであっても、使い方が分かるまで丁寧にサポートがある場合と販売した段階で終わりという場合では顧客満足度は大きく異なります。顧客満足度を向上させることは、製品自体が持つ価値以上の付加価値を生み出すことに繋がります。
競合他社との差別化という意味でCXが重視されることも多いです。CXという言葉が世に広まった背景としては、多くの業界で「コモディティ化」が進んでいることが要因のひとつでしょう。
コモディティ化とは、付加価値のある製品やサービスが市場の成熟や技術の向上などによって差別化しづらくなっている状況を指します。この状態で競合と差別化するには、製品やサービス自体のみでなく、購入前の情報提供や購入後のサポートなど顧客の全体的な経験を通じた価値提供が必要となります。
リピーターの獲得に寄与できることも、CXの大きなメリットです。リピーターを獲得して、安定した収益基盤を作ることはビジネスにおいて大切です。
顧客に満足してもらうことができれば、次回以降も製品やサービスを利用してもらえる確率は上がります。そのためには購入時やその直後だけでなく、次回買い替えのタイミングまでの間満足頂く必要になります。買い替えのタイミングは商材や商流によって異なりますが、場合によってはセールステックの導入によって解決できる可能性もあります。セールステックとは、SFAやMAなどを使って営業活動を効率化させることを指しており、CXと同様注目されている考え方です。
SFAとは:https://d-delight.jp/blog/marketing/4585
MAとは:https://d-delight.jp/blog/marketing/6803
ここでは、CX向上の成功事例をご紹介します。
多くの企業の中でも、特に顧客のリアルな声をしっかりとオープンにして改善することでCX向上に繋げた事例をご紹介します。
自動車保険大手のソニー損保では、「お客様の声」「コエキク改善レポート」としてユーザーの声を集めてサービス向上に活用しています。
「お客様の声」では、実際に事故対応のロードサービスや事故対応を経験した顧客を対象に対応の良し悪しを掲載しています。この中には、「とても満足」「満足」以外にも「不満」「とても不満」といった声も含まれています。
サービスについての悪い評価をそのままウェブサイトに掲載することは一見企業にとって何のメリットもないと感じられます。しかしお客様の生の声を集めてサービス改善というサイクルを繰り返すことによってCXを向上させようという取り組みは、中長期的に見れば顧客との信頼関係の底上げや、紹介や口コミを通じた新規顧客の獲得にもつながります。
(ソニー損保「お客様の声」https://from.sonysonpo.co.jp/auto/review/)
また「コエキク改善レポート」では、すべてのユーザーがウェブサイトに対する要望を投稿できるようになっています。その要望を「改善しました!」「検討します!」「申し訳ございません」の3つにグルーピングし、それぞれに対しての改善項目と一緒に掲載しています。
また、半年に1度「お客様の声を反映した改善事項」としてユーザーの声を起点とした課題への取組状況を報告しています。
(ソニー損保「コエキク改善レポート」https://from.sonysonpo.co.jp/improvement/)
(ソニー損保「お客様の声を反映した改善事例」:https://www.sonysonpo.co.jp/shinrai/cshi005.html)
ここまで、CXの考え方・メリット・導入事例についてご紹介をさせて頂きました。私が営業担当としてお客様とお話をさせて頂く中で多いのが、「とりあえずコンテンツを作ってしまっている」という話です。コンテンツの方向性が決まっていないためにターゲットや訴求ポイントがあいまいになってしまうのです。
CXを意識することで顧客満足度を向上させ、ファンを獲得できるというメリットがあります。上記事例のようにユーザーの生の声を収集すること自体が、場合によってはコンテンツ制作の裏付けになったり、新たな事業・プロダクト開発の一助にもなりえます。
このサイトでは、このブログの他にも様々なブログが掲載されています。マーケティング課題解決の一助になるかと思いますので、是非ご覧ください。