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創業70年企業が若手主導で挑んだブランド再構築事例 – フクシマガリレイ株式会社

2025年08月04日更新

背景:老舗メーカーが直面した課題と改革の必要性

業務用冷凍・冷蔵設備の老舗メーカーであるフクシマガリレイ株式会社(旧・福島工業株式会社)は、1951年の創業以来業界内では高い知名度を誇っていました。
しかし一般消費者への認知度は低く、自社の存在を広く伝えることが長年の課題だったのです。海外市場への本格進出や更なる成長を見据える中で、ブランドイメージの刷新と発信力強化が不可欠となりました。
このような背景から、創業70周年を目前に控えた2019年、社内ではグループ全体のブランド再構築に向けたプロジェクトが立ち上がりました。
従来の社名「福島工業」では町工場のような印象を与えてしまうという内部調査結果もあり、ブランド戦略の見直しによって自社の価値を社会にわかりやすく伝える必要があったのです。

施策:若手チームによるコアバリューの再定義と大胆なブランド刷新の取り組み

プロジェクトチームの中心メンバーには30代前後の若手社員が揃い、従来の延長線上にない新たな発想でブランド再構築に挑みました。
彼らはまず社内のコアバリュー(企業や個人が最も大切にしている価値観)の再定義に着手します。
企業の存在意義(パーパス)を原点から見つめ直し、「食といのちの未来を拓く」という新たなパーパスを策定しました。
これは、「食」の安全・安心を守り続けることはもちろん、人々や地球の「いのち」まで含めてより良い未来を切り拓いていくという、同社が社会に提供する価値を端的に表現したものです。
コアバリューを明文化することで、長期ビジョンや戦略の一貫性を社内外に示し、企業ブランドの軸を明確にしました。

こうした価値観の再定義を踏まえ、
プロジェクトチームは具体的なリブランディング施策を次々と打ち出しました。その主な施策は以下の通りです。

グループブランド名と社名の統一変更: グループ全体のブランドを新たに「GALILEI(ガリレイ)」に統一し、2019年12月3日付で社名も「フクシマガリレイ株式会社」へと変更しました。
これにより事業内容の幅広さを生活者や取引先、株主にまで明確に伝えるとともに、グループ一丸で成長を目指す姿勢を打ち出しています。
若手主体のプロジェクトチームが提案したこの社名変更案は経営層の了承を得て実現したもので、社内には大きな達成感が生まれました。

ブランドメッセージ・コンセプトの策定: コアバリューに基づき、企業のブランドメッセージとして 「Be cool, Be alive」 を掲げました。
DNAである「冷やす=cool」技術を核として、「alive」、すなわち鮮度を保つという意味にとどまらず、食を通して人のいのち(健康、寿命)や地球環境に関わることの使命、誇りを表しています。
また新ブランドを象徴するキャッチコピーとして 「ガリレオは、世界を変えた。ガリレイは、暮らしを変える」 というフレーズを採用し、
社名の由来であるガリレオ・ガリレイになぞらえて自社の変革姿勢をアピールしました。

ビジュアル・デザインの刷新: 新ブランドの世界観を体現するメインビジュアルとして、ガリレオ・ガリレイをモチーフにした 子ども像のクリエイティブ を制作しました。
歴史的偉人ガリレオを老人ではなく未来ある子どもとして描くことで、「生まれ変わった会社がこれから成長していく」イメージを重ね合わせた斬新な表現となっています。
このビジュアルは前述のキャッチコピーやブランドメッセージとも響き合い、企業の目指す方向性を端的に示すものとなりました。

統一コンセプトによる発信ツールの展開: 上記のコンセプトとデザインを軸に、社名変更の周知とブランド訴求のため多角的なプロモーション活動を展開しました。
具体的には、一般向けには社名変更を周知する交通広告や新聞広告を打ち出し、取引先企業向けには経営メッセージや新本社紹介を盛り込んだタブロイド紙を制作。
また企業サイトの全面リニューアルやブランドコンセプト動画の公開、新本社ショールーム(オープンイノベーション拠点「MILAB」)での内覧会イベント開催など、
オンライン・オフライン両面で統一感のある情報発信を行いました。社内外のあらゆる接点においてデザインと言葉のトーンを揃えることで、
一貫性のあるブランドコミュニケーションを実現しています。

成果:ブランド再構築がもたらした効果と今後の展望

大胆なブランド再構築の発表からわずか数ヶ月ながら、社内外で着実に成果が現れ始めました。
まず社内では、多くの社員が「新しいことにチャレンジしよう」という前向きな意欲を示すようになり、改革への当事者意識が醸成されています。
若手社員を中心に実現したプロジェクトであるだけに、「自分たちが会社を変えた」という自信が社風に良い影響を与えているのでしょう。
加えて、新ブランド発表後には新規取引先の増加という具体的なビジネス効果も現れました。
実際に社名変更公表翌月の2020年1月以降、「面白そうな会社だ」と興味を持った新規顧客からの引き合いが増加しており、対外的なイメージ刷新が商機拡大につながったことが伺えます。
既存顧客からの期待も一段と高まりプレッシャーもありますが、それを社員一人ひとりが更なる成長の原動力と捉える前向きさが生まれています。

社名変更と新ブランドの浸透はグループ全体にも好影響を及ぼしました。
グループ各社それぞれが社名変更に向けた議論を社内で行い、「ガリレイ」の名を取り入れた社名へと順次統一されています。
単に親会社に従うのではなく、「新しいブランドを共に育て、成長していこう」というグループ姿勢を各社が共有する契機となりました。
また2019年10月には、新本社で開催した内定式にていち早く新ブランドのメッセージを内定者に体感させる試みも行われました。
社長から「新しいブランドとこれからの会社を支えるのは君たちだ」という激励を受けた内定者たちは、自分たちが変革の担い手になるのだという期待に胸を膨らませたといいます。
このように、ブランド再構築の取組みは将来の社員にまで影響を与え、企業文化の醸成にも寄与しているのです。

最後に、フクシマガリレイ社はこのブランド再構築を出発点として、更なる飛躍を目指しています。
統一された「GALILEI」ブランドのもと、刷新された企業イメージを国内のみならず海外市場にも浸透させることが今後の課題です。
幸いにもブランド戦略の強化と時を同じくして主力製品のモデルチェンジが実現し、「ガリレイ」ブランドを冠した新製品群も投入されました。
社内のコアバリューを見つめ直し、若手の力で生まれ変わったブランド
その成功事例であるフクシマガリレイ株式会社は、変化を恐れず挑戦し続ける企業が持つ大きな可能性を示しています。
今後もこの新たなブランドを育て上げ、社是である「食といのちの未来を拓く」の実現に向けて歩みを進めていくことでしょう。

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山本 大輔

ビジネスコンサルティング部 部長

山本 大輔

BtoB企業、教育機関のブランディング・マーケティング支援に従事。上流の戦略策定からコアバリュー定義、リード獲得・育成の仕組み構築の伴走支援が得意。 ・保有資格 ウェブ解析士

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