2025年04月15日
カスタマージャーニーは、単に顧客の行動を時系列で並べた図ではありません。
「顧客がどんな体験をし、どんな感情を抱いたか」を見える化するツールです。
つまり、ジャーニー設計とは、CX(カスタマーエクスペリエンス)=顧客体験の質を高めるための設計行為であるべきなのです。
失敗例①:「行動ばかりで“感情”が描かれていない」
顧客のアクション(検索する・資料請求する)は書いてあるけど、そのとき何に迷い、何に安心し、何に不満を抱いたかが抜けているジャーニーは、CXを無視した“作業用マップ”です。
→ CX的対策: フェーズごとに「顧客の感情ラベル」を記載し、ポジティブ体験とネガティブ体験の分岐点を明確にする。
失敗例②:「全部のフェーズに手を出し“誰の何を”が見えない」
CXとは「一貫した体験の質」を意味します。にもかかわらず、手段先行でバラバラに施策を打つと、顧客の体験が途切れ、迷いや不信を生み出します。
→ CX的対策: 一連の体験のなかで“体験ギャップ”が生じているポイント(たとえば、Webの印象と営業担当のトーンが違う等)を明示し、重点的に改善する。
失敗例③:「“自社の都合”で作られている」
ジャーニーを描いたものの、それが営業・製品サイドの都合で引かれた理想ルートになっていては、顧客の現実と乖離してしまいます。
→ CX的対策: 顧客インタビューや定性データを通じて、顧客が実際に選ばなかった理由・途中離脱した瞬間の感情を拾い上げる。
失敗例④:「設計して終わり。改善されないCX」
CXは“設計”より“運用と改善”にこそ価値があります。定期的に顧客の声や行動ログを反映しないと、ジャーニーは社内用の“お飾り資料”になってしまいます。
→ CX的対策: 顧客満足度(NPSなど)、Webログ、FAQ件数などを元にCXのボトルネックを定量的に改善するループを組み込む。
多くの企業が「何から手をつければよいか分からない」と悩むのは、顧客の体験のどこにギャップがあるのかを言語化できていないからです。
カスタマージャーニーは、体験ギャップを可視化し、「どこに手を入れれば、顧客満足が大きく改善されるか」を示す優先順位マップとして機能します。
例えば:
・問い合わせ直前で離脱が多い → 信頼不足 → 導入事例の補強
・初回面談後の温度感が下がる → 共感不足 → 営業スクリプトの見直し
このように、CXの視点でジャーニーを眺め直すことで、点ではなく“体験の線”として顧客との関係を見直すことができるのです。
カスタマージャーニーは、きれいに描くことが目的ではありません。
CXを向上させる“行動指針”であり、部門横断で共通言語を持つための仕組みです。
失敗しないために必要なのは:
・顧客の“感情”まで見据えた設計
・現場と共創するリアルな運用
・データを使った継続的な改善フロー
CXを中心に置いたジャーニー設計は、顧客との信頼を育み、選ばれ続けるブランドへとつながっていきます。