2016年05月19日
営業とマーケティングについて、「違いがわからない」という人は多いはずです。たしかに両者は似通っているものであり、混同してしまう部分があります。
とはいえ、営業とマーケティングとの間にさまざまな違いがあることは、理解しておかなければいけません。
本記事では、「営業とマーケティングにおける基本的な違い」「それぞれに求められるスキルと資質」「営業部門とマーケティング部門が対立する理由」といった点について解説します。
営業とマーケティングの違いを理解し、両者の連携を図ることは非常に重要です。本記事を参考に、両者の連携強化を図りましょう。
営業とマーケティングの違いは、一言で言えば「売る人」と「売るもの、売る方法を考える人」と表現できるでしょう。営業は、製品を顧客に売ることが役割です。
自社が作り出した製品を、築かれた販売方法に基づいて売り上げて、会社へ利益をもたらします。そしてマーケティングは、市場から逆算して売れる商品を考えて、適切な売り方について考案するのが役割です。
何が売れるか、どうすれば売れるかは、市場を分析することで見えてきます。つまり市場に適合したものを創造し、自社のプロダクトとして加えるわけです。
しかし、創造しただけでは利益が発生していません。利益を出すためには売り上げる必要があるわけですが、それは営業に託されています。
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基本的に、上記の違いを理解していれば、言葉としては問題ありません。しかし、営業とマーケティングのレベルアップや連携を図るのであれば、より深い理解が必要です。
もう少し、営業とマーケティングの詳細な違いについて詳しく解説します。今回は「役割」と「目的」に注視したうえで、両者の違いを分析するものです。
まずは、営業の役割とその目的について解説します。一言で言うなら顧客にアプローチするのが役割です。マーケティングは、基本的に顧客と対面することはありません。顧客と対面するのは営業の仕事です。
営業は、顧客と対面し、その関係性を築きます。続いて、顧客の望んでいることや課題点を理解するのが、基本線となるでしょう。
そして、課題点を解決する方法について、(多くの場合は自社製品を)提示します。最後にはクロージングをかけて、目の前の商談相手を新規顧客として獲得するわけです。
その中では、ヒアリングやトークなど、さまざまな営業努力が必要です。また、「BtoC」か「BtoB」なのかといった状況の違いにも、臨機応変な対応が求められます。
というように顧客に対して具体的なアプローチをかけるのが、営業の役割です。もちろん対面の営業のみならず、インサイドセールスなども営業の担当範囲となります。
また、細かいところで言えば既存顧客へのアップセルなども、役割の一つとして数えられるでしょう。
・目的は、数字を獲得すること
営業の最終的な目的は、なんといっても数字を獲得することにあります。数字は、営業マンにとってすべてとも言えるでしょう。営業における数字とは、多くの場合「売上」を意味します。
いくらマーケティングによってすぐれたものが生み出されようとも、売上として計上できなければ意味はありません。営業が売り上げてこそ、プロダクトやサービスは意義を持ちます。
そして、売上こそが、当然ながら企業にとってもっとも必要なものです。従って営業の最終的な目的は、やはり数字を獲得することだと言えます。その背景を考えれば、「数字が上がれば評価され、そうでなければ評価されない」のは、きわめて合理的なことだと言えるでしょう。
マーケティングにおいて考案されたプロダクトやサービス、その販路から利益を出せるかどうかは、営業の腕前にかかっています。
・短期的なスパンで対応する
マーケティングと比較して、営業は「短期的なスパンで対応する」という側面があります。扱われているプロダクトやサービスにもよりますが、一つの案件について、マーケティングほど長いスパンを費やすわけではありません。
むしろ企業からは、できるだけ短期の間に多くの売上を獲得することが求められます。いかに多くの成約を、どれだけ早く獲得できるかが、営業としてもっとも重要な課題だと言えるでしょう。
成約できない、あるいは成約するまで時間がかかっていれば、会社の存続にも関係してきます。
続いて、マーケティングの役割と目的について解説します。営業との違いも踏まえて、以下3つに集約されるでしょう。
それぞれについて、下記で詳しく解説します。
・マーケットを観察するのが役割
マーケティングにとってもっとも重要なことは、マーケットを観察することです。マーケットを観察し、「今、何が必要とされているか」を見極めます。そしてそれを形取り、製品とするわけです。
また、「自社はどの市場において展開するべきなのか?」という部分を考えるのも、マーケティングの役割になります。営業の場合、対象は基本的に顧客個人、つまり対人でした。
しかしマーケティングは、営業とは違い、顧客の前には出てきません。顔さえ知らないマーケットと向き合い、ニーズに応えるのがマーケティングです。
・市場と顧客との関わりを維持する
マーケティングの役割は、ただ市場を観察するだけでは終わりません。最終的な目的としては、「市場と顧客との関わりを維持する」というところになります。
あらゆる製品は、顧客のことがわかっていなければ、著しい売り上げとはなりません。また、それを一時的ではなく長期的に販売するのであれば、逐次マーケットのニーズを知る必要があります。
マーケティングはそのニーズを認識し続け、自社と、市場と顧客の関わりを維持するわけです。つまり顧客から必要とされ、また市場から信用されるところを目指します。
良好な関係があれば、よりローコストな営業促進がなされ、市場での立ち位置も高くなっていくわけです。そのようなマーケティングの努力があり、よりよい営業推進につながっていくと言えるでしょう。
・長期的なスパンで対応する
営業については、「短期的なスパンで対応する」と解説しました。マーケティングはそれとは違い、基本的には「長期的なスパンで対応する」という点が特徴的です。
マーケティングでは、自社と、市場と顧客との関わりを長期的に追いかける必要があります。よって、短期的ではなく、何年、何十年というスパンが必要です。
一つの事象に対するスパンの取り方も、営業とマーケティングにおける大きな違いだと言えます。
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何かを売る営業と、売ることについて考えるマーケティング。上記において、両者の違いは理解してもらえたはずです。これだけの違いがあるのだから、営業とマーケティング、両者に求められるスキルと資質も、また異なります。
両者に求められるスキルと資質の違いを理解したうえで、人材を配置することが重要です。あるいは配置された当事者も、何が必要なスキルや資質なのかを理解したうえで、業務に当たる必要があるでしょう。
下記では、営業とマーケティング、それぞれで求められるスキルと資質を解説します。
営業においては、以下のようなスキルと資質が求められるでしょう。
きわめて基本的なことのように受け取られるかもしれません。しかし、これらを理解し、実践できている営業担当者(部門)は、意外にも少ないものです。
下記にて求められるスキルと資質を詳しく解説するので、より正確な理解を持っておきましょう。
・顧客が望んでいることを予測できる
営業において求められるスキル、資質として、「顧客が望んでいることを予測できる」のは最重要です。なぜなら、顧客が望んでいることを予測すれば、製品は売れるから。
たとえば顧客が「勤怠管理を効率化したい」というなら、自ずと何が必要な製品かは見えてきます。また、「このような態度の会社と取引したい」「こんな営業担当者についてもらいたい」というような要望を持っていることもあるでしょう。
とにかく顧客が求めることは、多種多様です。その中で顧客の視点を持ち、何が望まれているか理解して、適切な営業手法を取ることが、営業では重要です。
・コミュニケーション能力・対人関係能力が高い
営業担当者にとって、コミュニケーション能力と対人関係能力は非常に重要です。コミュニケーション能力については、「プレゼンテーションが巧みである」というだけではありません。
「顧客との信頼関係を作り上げる能力、人柄、人格」や、「要望を聞き取る力」といった部分も要求されます。もちろん短期的に見れば、トーク術などで押し切れる部分もあるでしょう。
しかし今後の自社との関係性も考えれば、それだけでは足りないのです。同時に、対人関係能力も必要だと言えるでしょう。社内・社外問わず、営業はさまざまな場面で登場します。
その中では良好な対人関係能力を維持するスキルが、やはり必要不可欠です。
・売り上げに対して、適切なアクションが取れる
売り上げに対して適切なアクションが取れることも、営業のスキル・素質として挙げられます。先ほども触れたとおり、営業にとって売り上げや数字がもっとも重要です。
必要な数字を獲得するためには、適切なアクションが求められます。それを逆算して実行に落とし込むことができるのなら、営業として素質があると言えるでしょう。
マーケティング担当者には、以下のようなスキルと資質が必要だと言えます。
それぞれについて、下記で詳しく解説します。
・顧客の挙動を予測、認識できる
顧客の挙動を予測、認識する能力は、マーケティングで欠かせないスキル・資質です。顧客の動き方がわからなければ、顧客に求められていることはわかりません。
そうすると、顧客が求める製品も作れないし、関係性も維持できないわけです。しかし、複雑な顧客の挙動を知って的確にアンサーできるなら、売れる製品を売れる方法で提供できます。
よって顧客の挙動を予測、認識することは、とても重要なスキル・素質だと言えるでしょう。これは単に、「数値的な分析ができる」というだけではありません。
「なぜ、そうしたのか?」ということを紐解く論理的思考能力が必要です。あるいは、「何を感じているか」を感じ取る感性も求められるでしょう。
・マーケティングの結果から、新しい発想を見つけられる
ただし、顧客の挙動を予測、認識するだけでは、じゅうぶんとは言えません。顧客の挙動を予測、認識したうえで、「新しい発想が見つけられるか」が重要です。
新しい発想からは、顧客のニーズに的確なアンサーや、今までにない売り方や見せ方が見えてきます。ここにも論理的思考能力、あるいは「仮定立てて、結果を想像する力」が必要です。
そうして複数立てられたもっとも有力な仮説を前提にして、製品開発や販売方法の確立へつなげて行きます。
・経営者の目線に立ち、マーケット全体を俯瞰できる
経営者の目線に立てるマーケティング担当者は、きわめて優秀です。なぜならマーケティングにおいては、「今、会社と市場や世論は、どのように関係しているか」を俯瞰しなければいけないから。
たとえば製品の販売経路を確立するにしても、「それが実施されれば、企業の経営において何が影響として出てくるか」を考えます。ただ売るだけであれば、もっとも売れる販売経路でかまいません。
しかしブランディングや社会的評価などを経営者目線で考えるなら、別な販売経路を選択しなければいけないケースもあります。というように経営者の目線に立って市場と自社を俯瞰することは、マーケティングにおいてたいへん重要な素質です。
また、マーケティング担当者と経営者は、ビジョンを共有するために社内でも近しい位置に置くのが得策かもしれません。
営業部門とマーケティング部門が連携することは、組織にとってきわめて重要なことです。しかしながら、営業部門とマーケティング部門が連携せず、むしろ対立するケースは少なくありません。
両者が対立する原因としては、「お互いに不満を感じている」という点が挙げられます。
まず、営業部門はマーケティング部門に対して、以下のような不満を抱きがちです。
対してマーケティング部門は、営業部門に対して以下のような不満を抱きがちです。
営業とマーケティングの役割が違うなら、価値観や重要視する点で違いが生まれて、対立するのは自然なことです。非常に難しいことですが、対立が解消、あるいは解消が必要な状態にならないよう、手立てを考えなければいけません。
ただ、いずれの手立てでも根底にあるのは「お互いの価値観を尊重し合う」ということです。営業の目指すことと、マーケティングの目指すこと、双方ともに企業の発展には必要なもの。
よって「一方が理解してくれない」と考えるのではなく、むしろ一方を積極的に理解することが求められるでしょう。そのためには、営業とマーケティングが、もう一方の業務内容や状況について把握することが、一つのポイントとなりそうです。
上記で、営業とマーケティングの違いについて解説しました。両者が連携を取ることの重要性についても、理解してもらえたはずです。
連携を高め、双方にシナジーをもたらす方法として、「営業担当者がマーケティングスキルを知る」という施策があります。営業部門に属しながらマーケティングスキルを学ぶのは、決して簡単なことではありません。
しかしそういった営業担当者は、マーケティングと営業双方、あるいは企業にとって、たいへん重要な存在となります。
営業担当者であるにもかかわらず、マーケティングスキルを身につけるべきことには、理由があります。まず、営業担当者がスキルを有していれば、当然ながらマーケティング部門との連携はスムーズになるでしょう。
マーケティングという視点と営業の視点、両方から客観的な意見を述べられる人物は、議論の進展を助けます。先ほど触れた営業部門とのマーケティング部門の軋轢を弱めるという点でも、有用かもしれません。
また、営業担当者本人が、営業においてマーケティングスキルから得られた情報を活用することも可能です。さらに顧客やプロダクト、サービスへの理解も深まり、営業担当者としてより進歩できます。
当然ながら、それは企業の利益として反映されるでしょう。したがって、営業担当者でもマーケティングスキルを身につけるべきだというわけです。
といっても、本来的には営業とマーケティングは違います。別の部門におけるスキルを、多分に習得するのは現実的ではありません。
「マーケティングの範ちゅうでしか活用方法がないスキル」というのも存在します。
その背景を踏まえたうえで、以下のようなスキルは、営業担当者も身につけやすいものです。また、身につけてからもさまざまな活用方法が想定でき、たいへん有用だと言えます。
いわゆる「事象を分析する」という目的のWEBマーケティングスキルは、営業担当者にも必要だと言えます。それぞれについて下記で解説するので、参考としてください。
3C分析とは、一言で言えば「自社がどのような戦略を取ればよいか」を見出す手法です。
3Cとは、
の頭文字を取ったものです。3つのCを分析すれば、
を、知ることが可能です。3つを分析することで見えてくるものは、「KSF(成功するために必要な要因)」と呼ばれます。
つまり「自社が利益を得るには、どのような戦略を取ればよいか」が見えてくるわけです。営業はマーケティングとは異なり、「自社製品の強み」のみに着目してしまう部分があります。
しかし3C分析的な視点を持つことで、CustomerとCompetitorから逆算して、適切な営業手法の発見へつなげることが可能です。
PEST分析は、「顧客の状況」を把握する目的で使われるWEBマーケティング手法です。全体を俯瞰する3C分析と違い、考え方が営業のそれと近く、たいへん活用しやすいでしょう。
PEST分析とは、以下4つの頭文字を取ったものです。
つまり顧客に対して4つの側面から分析することで、ヒントを見出すマーケティング手法というわけです。4つの側面に当てはめれば、顧客から何が求められていて、何をどの程度求められているか仮説立てられます。
たとえばEconomyを考える場合、「顧客はどの程度、予算を捻出できるのか?」が推測できるわけです。すると、予算に基づいて上位グレードを提案するなどの選択肢も検討できるようになります。
マーケティング手法ではありますが、営業の場面におけるさまざまなヒントを見つけられるかもしれません。また、マーケティング部門と同じような顧客分析をすることで、想定される顧客について認識を共有することも可能です。
4P分析も、営業手法とは違いますが、活用する余地のあるマーケティング手法です。4P分析は、「プロダクトやサービスについて、どのような販売方法を取るべきか」を明らかにします。
4Pとは、以下の単語の頭文字を集めたものです。
というように4つの観点から、販売方法について考案します。4P分析の視点を持てば、「マーケティング部門が、何を考えて製品を考案したのか」が理解できるわけです。
そこから得られた知見に基づき、顧客への最適なアプローチを考案することもできるでしょう。あるいはマーケティング部門と連携し、製品についてディスカッションする場合にも役立ちます。
マーケティング部門と視点が共有され、意見の交換や理解がスムーズになるからです。
営業DX推進に貢献する『ワンストップ支援メニュー』と『実績・事例』はこちら
営業とマーケティングについて、「違いがわからない」という人は多いはずです。たしかに両者は似通っているものであり、混同してしまう部分があります。
しかし営業部門とマーケティングは、かなり大きな違いがあるのです。役割も対象も、スパンの取り方も、それぞれまったく異なります。
ただし「違う」とはいえ、決して無関係なわけではありません。むしろ営業とマーケティングは、深く繋がっていると言えます。
売上を獲得するまでが、「一本の線」だったとしましょう。すると営業とマーケティングは、位置取りこそ違えど同じ線上にはあるわけです。
だとすれば双方が理解しあい、協力することは当然ながら重要だと言えるでしょう。営業とマーケティング双方が深く繋がっていることを理解し、互いに連携を高めることが重要です。
ビジネスコンサルティング部 マネージャー
吉田 一夫BtoB業態、特にインテリア・住設建材・住宅・FA業界などの企業様でデザインや販売促進にまつわる課題解決に従事。製品の『良さ』を捉え直し、価値を可視化。販売する営業パーソンの営業活動標準化など。 緩やかであいまいな状態のお悩みから一緒にお手伝いいたします。 第38回日本BtoB広告賞「製品カタログ単品の部」銀賞 第39回日本BtoB広告賞「製品カタログ単品の部」銅賞