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伝わるクリエイティブの考え方:発想の“枠”を超えるには

2018年04月05日

前回の記事では、当社の企画・デザインにおけるアプローチの方法のうち、「製品」との向き合い方(の考え方)についてご紹介させていただきました。簡単にまとめると、製品の「本当の良さ」は、仕様書にあるような一面的な情報だけではなかなかユーザーに伝わらない。そうではなく、製品を取り巻く様々な世の中との「関係」、ユーザーから見た「意味」に着目する。そこからユーザーと共有しあえる文脈=ストーリーを探す、というものです。さて今回は、より具体的に「どうやってストーリーに迫っていくか」についてお話ししたいと思います。 

遠回りをして「無駄づくし」の旅へ

1つの方向から製品を見ているだけでは、製品と取り巻く「関係」や「意味」は見えてきません。具体例を出して考えてみましょう。誰もが知っているけれど、「製品」として見た場合にはコモディティ化していて、なおかつ、ちょっと取っかかりが難しそうなものがいいですね。例えば、「水道の蛇口」(水栓)はどうでしょう。皆さん、必ず毎日お世話になっていますよね。これを題材に、製品の「本当の良さ」を考えていくことにします。※ちなみに、住宅設備関係の業界では、たくさんの水栓が載った、水栓専門のカタログというものが存在します。

ご説明した手順でいえば 「さっそく水栓をいろんな方向から見てみよう!」ということになるわけですが、そう言われても、水栓は水栓にしか見えません。確かに、ものすごく観察をすることで、「金属でできている」とか「中が空洞になっている」とか、製品のプロパティは見えてきますが(もちろんこれはこれで大事)、この調子ではいつまでたっても「水栓」から離れられず、「関係」や「意味」といったものが、立ち上がって見えてこないことに気付くはずです。これは結局、「製品を見るための視点」としては実はまだ1つしか持てていない状態です。質はともかくとして、アイデアの量に行き詰まる時というのは、得てしてこういう状態といえるかもしれません。もっと色んな見方ができるはずなのに、自分でも無意識のうちに決まった枠の中で考えてしまっている・・・思い当たる方も少なくないのではないでしょうか。では、この枠は、どのようにすれば乗り越えられるでしょうか。

私たちはこういう時、一旦ぐるっと遠回りをします。そしてこの遠回りの仕方ですが、ちょっとしたコツのようなものがあります。それは「抽象度を一段上げて考えてみること」。ぐっと引いてスコープを拡げる感じです。先ほどの例では、「水栓」から一旦離れて、そこから連想される「水」という対象に視点を移します。視点としては一段抽象度が上がりました。こうすることによって、テーマ自体の包容力が大きくなるわけです。ここからは連想ゲームです。「水といえば〇〇」をひたすら書き出していきます。ここでは発想を拡げるのが目的ですから、ひとまずどんな内容でもOKとします。例えば、単純に「H2O」とか「色や匂いがない」とか「形を変える」とか。あるいは「雨」「川」「海」「循環」「水の惑星」「生命の源」とか。「お湯」「風呂」「癒し」「ゆらぎ」「音」とか。「打ち水」「呼び水」「水いらず」「やらずの雨」・・・などなど。「書き出す」というのもポイントかもしれません。アウトプットした情報が目からインプットされ、まさに“呼び水”となって、次の発想につながる効果が期待できるからです。

色々出てきますので、まあとりとめが無いというか、こんなの要る?みたいなものもあり、一見、無駄にも思えますよね。私たちのデザインラボでも「無駄づくし」の旅と呼んでいるぐらいです。でも、とにかくこの「無駄づくし」をやってみる前と後では、格段に「製品を見るための視点」が増えているはずです。例えば、水のつく言葉などは、製品そのものからはかなり遠そうな印象ですが、「文化」とか「風習」とか「歴史」といったもので水を語れそうだ、という視点が(最終的に企画として成立するかどうかは別として)ともかくも手に入ります。 

要するに、このプロセスで何をしているのかというと、企画を考えるときの前提でもあり制約でもあるテーマ自体を、ある種強制的に押し広げているわけですね。そのことによって、自分でも気付かない発想の枠を無効化してしまうのです。この視点を獲得した状態でもう一度製品に目を向けてみることで、「関係」や「意味」が見えてきやすくなると思います。ここから先の思考の進め方については、また次回ご紹介したいと思います。 

 

当社クリエイティブ事例のご紹介
機能訴求から、「共感」できるベネフィット訴求へ。
ペルソナに基づく新しい顧客層に向けた表現を開発。
リオン株式会社 様 新製品「RIONETシリーズ」プロモーションツール制作

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