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【視察レポート】韓国・ソウル出張 〜エンタメ大国が創る、空間とブランド体験の最前線〜

2025年06月25日更新

5/30から6/2にかけて、韓国・ソウルで視察に行ってきました。
今回の出張の目的は、建築・空間デザイン・ブランド体験における最新トレンドを、自身の五感で捉えること。
日本の商業空間や展示演出と比較しながら、現地で得たインスピレーションを報告致します。

■明洞エリア
初日はソウル駅から明洞へ。宿泊地を起点に、繁華街の空気感をリサーチ。
各店舗は、物販・飲食の区分を越えた体験型ショップやSNS連動の仕掛け(フォトスポット)が増加しており、「撮って拡散されること」を前提としたディスプレイが目立ちました。

■HYUNDAI SEOUL|“空間=体験”の完成形
続いて汝矣島のヒュンダイソウル(The Hyundai Seoul)へ。
商業施設としてのサイズや規模感以上に、「空間が人を癒し、ブランド価値を高める」ことに徹底した施設です。

来場者の大半が「購入目的」ではなく「空間体験」を求めており、小売業の再定義を感じました。
日本の百貨店とは異なる、“体験から始まる購買導線”が整備されており、今後の空間開発に参考になりました。

そして、街を歩いていて特に圧倒されたのが、LEDディスプレイによる演出です。
明洞や江南、COEXなどを中心に、巨大なLEDビジョンがビルの外壁を覆い、歩行者の視界を支配するかのように映像が展開されています。
映像広告という枠を超え、都市空間そのものがメディアとして成立しており、建築・映像・光が一体となった演出が印象的でした。
特に夜の時間帯には、街全体が没入型のエンタメ空間へと変貌していました。

■TAMBURINS|香りを「空間体験化」したブランド戦略
注目はスキンケア&フレグランスブランドTAMBURINSの旗艦店。
ここはもはや香水ショップではなく、香り・映像・照明が融合した不思議な空間でした。

・香水ごとに異なるストーリーをもとに設計された個室
・視覚・嗅覚に訴えるインスタレーション的ディスプレイ
・韓国ブランドらしい、プロダクトとアートの融合
ブランディング=空間化の好例。香りを売るというより、世界観を“体験させる”場所としての完成度に驚きました。

聖水エリアでは、Diorのポップアップストアにも立ち寄りました。
温室のような建物が印象的で、ファッションだけでなく香りやアートなど五感でDiorの世界観を体験できる空間でした。

■ピョルマダン図書館(COEX内)|“静と動”の複合商空間
次に訪れたのはスターフィールドCOEX内のピョルマダン図書館。
“本を読む場所”というより、本という造形物で構成された“公共アート”として圧倒的でした。・三層吹き抜けの空間中央にそびえる巨大書架(約13m)
・本棚の背面を光源に活用した演出
・隣接するカフェや書店が一体化した構成
商業施設の中に知性・文化・余白をもたらす設計が成されており、テナント売上だけでない“場の価値創出”の参考になりました。

■東大門デザインプラザ(DDP)|建築 × 展示 × 社会接点の融合体
この視察のハイライトとも言えるのが、ザハ・ハディド設計の「東大門デザインプラザ(DDP)」。
あまりに有名な建築物ですが、実際に歩いてみると、スケール・素材感・曲線美・視線誘導すべてが“非日常の演出装置”として機能していることに感動しました。

特筆すべき視察ポイント:
・ファサード: 銀色アルミパネルの滑らかな曲線構造が都市景観そのものを変える存在感。曲面が空を映しこみ、時間帯で表情が変化。
・内部構造: シームレスな動線設計。垂直動線ではなく、“歩くことで空間を自然に巡る”よう誘導。
・展示機能: 商業・アート・産業展示の3軸が共存し、デザインの発信拠点。
・運営面: ファッションショー・展示会・キッズイベント・テクノロジー展示まで、コンテンツが常に変化し続ける施設としての柔軟性も魅力。

所感:
ここまで建築が体験となり、かつ街のランドマークとして機能する場所はアジアでも稀有です。
単なる“映える建物”ではなく、創造活動のハブとして街と接続している点が非常に印象的でした。
■アートリゾートで締めくくる視察
最終日は、仁川の「パラダイスシティ」へ。アートとホテル、スパ、カジノ、ギャラリーが融合した複合施設。

・巨大なデジタルアートや現代アート作品が館内至る所に設置
・客室や館内全体が“アートで彩られた体験空間”としてデザイン
・宿泊客以外も回遊することができ、商業施設としても成立
ここでも「空間にストーリーを与える」設計思想が一貫しており、日本の高級ホテル開発とはまた違った“非日常空間”の在り方を体感できました。

■総括|空間設計がブランド戦略となる時代へ
今回の韓国出張で感じたこと。それは「空間そのものがブランドメディア」という強い認識が、韓国全体に広がっているということです。
ブランド世界観の空間化(TAMBURINS)
自然・アート・デジタルの融合的設計(HYUNDAI SEOUL)
建築そのものが都市のエンタメ装置(DDP)

このような先進事例から、日本における商空間や展示演出も、より「体験」「共感」「ストーリー性」が求められるフェーズに入っていると実感しました。今後、私たちの手がけるプロジェクトにも、こうした空間価値の思想を取り入れていきたいと思います。

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矢野 顕

空間コンサルタント

矢野 顕

空間デザイン領域を担当。主に店舗設計やショールーム、展示会ブースや家具に至るまで、立体に関わるものはお任せください。 単に見た目のカッコよさだけを追求するのではなく、常にお客様目線かつ、クライアントのニーズや目的を意識した空間デザインを心がけております。

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