2025年02月19日
カタログは、BtoB企業において製品やサービスを伝える重要なツールです。しかし、発信側が意図したメッセージが、必ずしも受け手にそのまま伝わっているとは限りません。特に、カタログが持つべき役割と実際の使用方法にはギャップが存在し、それが顧客体験やビジネス成果に影響を与える可能性があります。
この課題に取り組むため、私たちはカタログリサーチを通じて発信側と受け手の間にあるギャップを特定し、その解決策を導き出しています。本記事では、このリサーチの手法と、それがもたらす価値についてご紹介します。
カタログリサーチの本質は、単にユーザーの使用実態を明らかにすることではありません。企業が伝えたいメッセージとユーザーが実際に受け取る情報の間にどのようなギャップが存在するのかを発見し、それを埋めることが最大の目的です。
このリサーチを通じて、カタログが持つ役割を再定義し、企業とユーザー双方にとって価値のあるツールへと進化させることを目指しています。
私たちのカタログリサーチは、以下の2つのステップで進行します。
まず、カタログを制作・運用する企業に対して、以下のポイントをヒアリングします。
■営業部門:
・カタログが商談や商流の中でどのように使用されているのか。
・営業活動でカタログが果たす具体的な役割や効果。
■カタログ制作部門:
・カタログの目的や、ユーザーにどのように使ってもらいたいのか。
・カタログを通じて伝えたい企業の強みや製品の良さ。
これにより、企業がカタログに期待している役割や、発信したいメッセージの核を抽出します。
次に、カタログを実際に使用するユーザーに対してヒアリングを実施します。
・カタログがユーザーの商流の中でどのタイミングで登場するのか。
・ユーザーがカタログを使用する際の心理状態や感情。
・実際にカタログをどのように活用しているのか。
これにより、ユーザー視点での使用実態を明らかにし、企業が発信している内容とのズレを把握します。
リサーチを通じて明らかになったギャップの一例をご紹介します。 事例: IBIKENでのギャップと解決策
・メーカー側の認識: メラミン素材に新たな機能や柄を加えることに注力し、それを主な訴求ポイントとしていた。
・ユーザー側の認識: メラミンを「いち素材」として捉えており、他の素材と同列の扱いで大きな差異を感じていない。また、「他社と異なる方が良い」といった潜在的な期待も存在
このギャップが明らかになったことで、以下の解決策が提案されました。
「気になる存在として頭の中に『ブックマーク』してもらう」をコンセプトに、ユーザーとの新しい関係性を構築。
1.日常の情報提供を通じた認知向上:
デザイナーの記憶に残るよう、目に触れる機会を増やす。
2.新しい経験価値の提供:
メラミン素材そのものではなく、「新しい体験」を感じられる提案を強化。
3.業務への貢献:
単なるサプライヤーではなく、業務を支えるパートナーとしての位置付けを目指す。
これにより、メラミン素材が「ただの素材」から、「新しい価値を提案するブランド」へと進化することが期待されています。
カタログリサーチは、単なる情報収集ではありません。それは、企業とユーザーの間にある「伝わる」ための架け橋を築くプロセスです。以下に、その価値を具体的に掘り下げます。
リサーチによってユーザーが求める情報や感情を深く理解し、それに基づくカタログ構成を作成することで、顧客の共感を得られます。これにより、製品やサービスへの信頼感が高まります。
情報が整理され、使いやすいカタログは、営業担当者が顧客との対話をスムーズに進める助けとなります。これにより、営業プロセス全体が効率化され、成約率の向上につながります。
視覚的に洗練されたデザインや、顧客視点を反映した内容は、企業の姿勢やブランド価値を体現します。これにより、企業のイメージアップが図れます。
リサーチの結果を蓄積することで、次回以降のカタログ制作に役立つデータが得られます。これにより、カタログが進化し続けるツールとなります。
使い方をリサーチすることで、カタログのラインアップと使用実態との間にギャップが見つかります。数多あるカタログを整理し、使用実態に適したカタログを制作することで、費用対効果の改善を図ることができます。
カタログリサーチの本質は、発信側と受け手の間に存在するギャップを特定し、それを埋めることにあります。このプロセスを通じて、カタログは単なる情報ツールから、企業とユーザーを繋ぐ強力なコミュニケーション手段へと進化します。
IBIKENの事例からもわかるように、ギャップを発見し解消する取り組みが、顧客体験の向上やビジネス成果の改善につながります。
「伝わるカタログ」を目指し、ぜひ私たちのリサーチ手法を取り入れてみませんか?
以下、ご参考まで。
本記事が、みなさまのカタログ制作の成功に少しでも貢献できれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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CXマネジメント部 次長
福井 大樹媒体・ツール問わず、お客さまの様々な課題を解決するための企画・ディレクションを担当しています。社内では比較的ロジック重視の考え方をする派で通っております。課題中心で物事を考えるので得意領域は設定していませんが、強いて言うなら家具・建材、雑貨業界にはお客さまが多いです。 HCD-net認定人間中心設計スペシャリスト 認定取得。 第38回日本BtoB広告賞「製品カタログ単品の部」銀賞 「WEBサイト スペシャルサイトの部」銅賞 第39回日本BtoB広告賞「製品カタログ総合の部」金賞・銅賞 「製品カタログ単品の部」銅賞 第70回全国カレンダー展 「経済産業省商務情報政策局長賞」「第三部門金賞」受賞