2021年03月26日
他のマーケティング戦略でも言えることですが、フレームワーク化することで「何を考えることが戦略立案なのか」が明快になり、マーケティング戦略立案に慣れてない人でも立案作業に入れます。
特にデジタルマーケティングはスモールスタートが基本なので、マーケティング戦略立案に必要以上に踏み込むと出口のない深みにはまり、具体的施策立案に至る前に頓挫する可能性があります。最低限の決め事をして、施策を実施する中で必要に応じて内容を変更すれば良いのです。この最低限の決め事を戦略シートという形にしてフレームワーク化しましょう。
ここでは競争戦略のフレームワークとその作成方法を紹介します。競争戦略の戦略シートは比較的シンプルです。競争相手との比較表を作成することです。特に弱者の場合は漫然と強者と戦っても勝ち目がないことが多いため、競合比較表を見ながら自らの強みを明確化して、どこで勝負するかを考えます。
競合比較表とはこのようなものです。
この競争比較表作成で最も大事なことは「顧客目線で作成」することです。まずは横軸を決めましょう。今想定しているターゲット顧客が発注先選定にあたってどんな企業を有力候補として選び、その比較検討を通じて発注先を決めるかを思い描きます。
「勝手にライバルと想定していたが、顧客に直接聞いたところ自社が比較検討されているライバルは全く別の企業だった」等ということのないよう顧客とのコミュニケーションを取ります。もしくは顧客に調査をして当該案件に関する比較検討企業を抽出します。
皆さんの企業は比較検討企業の中に入っていますか?競争相手と比較してどのような位置にありますか?もし比較検討企業の中に入っていないようであれば、ターゲット顧客自体を見直さなければなりません。
並べる順番は自社を一番左に持ってくるより、「強者⇒弱者」の順で並べるのが良いでしょう。顧客目線で自社を客観視しやすいからです。自社を特別視するのでなく、「顧客だったらこう比較検討するだろう」と考え並べます。顧客の心理をどれだけ理解しているか問われる作業です。
次に縦軸です。機能の比較表を作成する訳ではありません。顧客がどんな基準で評価するか、その選定基準となる要因を想像し列挙します。顧客によっても違うと思いますが、大抵は「顧客にとっての価値」、「顧客にもたらす効用」で選ぶでしょう。
・基本能力(内容は商品によります)が高い
・実行スピードが速い
・操作がしやすい
・画面が見やすい
・表現力が豊か
・見た目がお洒落
・カスタマーサポートが親切で丁寧
・カスタマーサクセスが充実
・初期導入コストが安い
・ランニングコストが安い
等々。
選択に際し、何を基準に選ぶか顧客にヒヤリングするか、顧客にアンケート調査して選択重視点を把握することも必要に応じて行います。ワークショップを実際に行うと機能の列挙になってしまうことも多いのですが、それは大抵自社目線に陥っています。あくまで顧客目線、顧客が欲しい価値があるかないかを基準に顧客は発注先を選ぶですから、作成するのは顧客にとっての選択要因です。
この縦軸の選択要因の選定は、客観性だけでなく戦略性が求められます。「自社の強みが上手く浮かび上がるにはどんな選択要因を設定するのが得策か」からも選ぶのです。
弱者の場合は特に「この視点で選べば自社が一番」となれる選択要因を考えて見て下さい。差別化戦略、一点突破戦略、ニッチ戦略共「この視点で選べば自社が一番」がないと成立しません。追随戦略の場合は「コストが安い」「近くにある」での優位性が必須です。
二つの軸が決まったら実際に評価してみます。これも顧客目線で評価することが大事です。
一番いけないのは希望的観測に則り自社に対して手前みそな評価をすることです。ワークショップ等で評価させるとチームの勢いに乗ってどうしても自社に甘く採点しがちですが、これでは意味がありません。やらない方が良いでしょう。
何か突出して自社だけが◎がつく選定要因があればそこを強みとして集中的にアピールするのが良いでしょう。しかしいつもそうなるとは限りません。公正に客観的に評価してみたら上記のようになったとします。
このままだと顧客が自社を選ぶ理由はありませんよね。そこで次は意志と戦略をもって現状を変えます。
追随戦略を取るのであれば「コストが安い」を〇から◎に変える、すなわち更に安くする手があります。
一点突破戦略を取るならいずれか一つで一番を取るべく開発や体制を整えます。「実行スピードが速い」を〇から◎を越えて◎◎に一気に高めるため技術力を総動員するとか、「カスタマーサポートが親切」を飛躍的に充実させ〇を競争相手以上の◎◎にするとかです。いずれにせよかなりの覚悟とリソースが必要です。
強者の場合、この競合比較表で言う競合Aのポジションキープが必要です。全てで◎、もしくは価格だけ他社より高い△か〇でなければ今のポジションをキープ出来ない可能性が高いでしょう。どんな選択要因でも△は作らず、最低でも〇をキープです。
コストリーダーシップ戦略の場合は、どの選択要因でも満遍なく他社と同等以上で、かつ価格も◎であることが求められます。
弱みを作らないことが大事なので、上記のように仮に「実行スピードが速い」で自社を凌ぐ競争相手が出現した場合は、技術開発力を総動員してキャッチアップしこれを潰しにかかります。◎を◎◎にして競争相手の突出を避けるのです。
是非皆さんも一度この競合比較表を使って競争戦略を考えて見て下さい。
他の競争戦略の競合比較表の例もご覧になりたい方は下記資料をご確認ください。