2024年05月10日
CX(顧客体験)について考えるとき、どんな経営者でも、顧客には否定的な経験よりも肯定的な経験をしてほしいということに同意すると思います。ですが、CXに関して議論すると話題に上がるのが「CXを向上させることでビジネスとして利益があるのか」ということです。
実は、経営幹部にとって重要な観点からCXのビジネスケースを作ることは可能です。優れたCXがサービスコストやクレームの削減につながることを示すこともできます。また、CX の向上が企業の評判を高め、企業の回復力を高めることを示すこともできます。とはいえ、CX改善に投資するための最も明確なビジネスケースの1つは、CXの向上が顧客のロイヤリティを増加させることにつながり、その結果、収益が増加することを示すことです。
ロイヤリティには3つの種類があります。
・Retention:顧客維持
・Enrichment:顧客単価向上
・Advocacy:良い口コミ
これらによって最終的に収益の増加につながります。
CXとは、顧客と企業とのやりとりをどのように受け止めているかということです。これはビジネスの基本的な原動力です。具体的に、良いCXが収益増加につながることを示した分析を3つご紹介します。
① 海外の調査によると、CXとEX(エンプロイー・エクスペリエンス:従業員体験)が良い企業のCAGR(年平均成長率)が、CXとEXが悪い企業よりも約2倍高くなっていました。
② 業界によって、収益の重要な基準・KPIが違います。例えば、ホテルや小売業者は、ロイヤルティプログラムのデータを利用して、顧客のリピートビジネスや販売額を重視します。保険、通信、SaaSベンダーは顧客のチャーン(サブスクリプションの終了時に更新しない顧客の数)を重視します。特定の企業にとって、インパクトのあるビジネスケースを作るカギは、ポジティブなCXを経験したという顧客とネガティブなCXを経験したという顧客の関連収益指標を比較することである。
例えばヘルスケア業界では、医師とのリレーションを向上させたい製薬会社が医師のCXに力をしれていますが、CXに満足している医師は、不満を感じている医師と比べて処方する確率が2.7倍高いという調査結果があります。
③ もし企業が競合他社よりも優れたCXを継続的に提供し、CXがロイヤルティの決定要因であるならば、論理的にそれらの企業の株式価値は高くなると期待できるでしょうか?実は、これは非常に議論の多いテーマです。企業の株価を決定する要因は数多くあり、一筋縄ではいきません。
相関関係は弱いと考えるアナリストもいるが、CXリーダーである企業はCX後発企業よりも実際に良い業績を上げていることを発見したアナリストもいます。これは投資アドバイスを目的としたものではないが、ウォーカーという調査会社は、各年のCXリーダーとCXラガードの株価パフォーマンスを調べました(第三者機関のランキングを使用)。比較のために、投資家が毎年CXリーダーにのみ投資するという架空のシナリオを作成しました。10年間にわたり、その投資戦略はS&P指数よりも、CX後発企業よりもはるかに良い成績を収めました。
CX向上において一番大切なことは、顧客の目線に立って考え、顧客を喜ばせたいという気持ちだと思います。
ですが、ビジネス視点でCXを改善する意味を経営陣に納得してもらわなければ、CX改善プロジェクトの資金を得ることは難しいです。
今回の記事がCXプロジェクトに取り組む方の後押しになれば幸いです。
※本ブログは弊社グループ企業の株式会社mctの記事を元に制作しております