2026年09月16日更新
AIは、人の「素読み」を超えられるのか。
前回はAI校正のスピード・客観性・網羅性と、人とAIが役割を分担する新しい校正の形を紹介しました。
今回は、難易度の高い「素読み」に焦点を当て、AIの実力と限界、活用時の注意点を整理します。
素読みとは、原稿やリストと突き合わせる「照合チェック」とは異なり、完成した文章だけを対象に、第三者の目で通して読み、誤字・脱字だけでなく、日本語表現や文脈、読みやすさなどを総合的に確認する工程です。
「正解」が手元にないため、校正者自身の知識・感覚・経験が頼りになる、いわば校正の中でも特に属人性の高い作業ともいえます。
「読んでいて引っかかる」「なんとなく座りが悪い」といった感覚的な違和感を起点に、誤りを発見できるかどうかが素読みの質を大きく左右します。この“引っかかり”を言語化し、再現可能な形にすることこそが、AIにとって最大の挑戦になります。
AIは、文法の誤りや助詞の使い方、表記ゆれ、定型的な表現ミスなど、ルール化しやすい誤りを高い精度で検出できます。
そして大量の文章でも疲れることなく、一定の基準でチェックし続けられる点は大きな強みです。
一方、文章の意図や文脈、行間、業界特有の表現、意図的な表現の工夫なのか、単なる誤りなのかを見極めるのは、AIだけでは判断が難しい場面があります。
つまりAIは確率論的な「ルールに基づくチェック」に強く、人は「文脈やニュアンスを読み取る判断」に強いという特徴があります。

AIが指摘を出さなかったからといって、文章に問題がないとは限りません。
AIは学習したパターンの統計・範囲内で違和感を検出するため、初めて出てくる表現や業界特有の言い回しは見落とすことがあります。
そのため、最終的に「文章として自然で問題ないか」を判断するのは、人が担うことが重要です。
AIは事実関係を断定的に「修正」してくることがありますが、その根拠が必ずしも正確とは限りません。
固有名詞や数値、専門用語の扱いについては、AIの提案をそのまま採用せず、必ず一次情報で裏付けを取る運用が欠かせません。
・ハルシネーション:AIがもっともらしい嘘(事実とは異なる情報)を出力する現象
AIは文章を整えることは得意ですが、書き手の個性やブランドらしさまで均一化してしまうことがあります。
そのため、最終的な判断は、人が文章の意図や読み手への伝わり方を踏まえて行うことが重要です。
AIによる校正・チェックが当たり前になる時代は、確実に近づいています。
それでも、空気や意図を読み取り、「本当に伝わるか」を見極めるのは、人の感性です。
だからこそ、人が読む最後のひと押しには、まだまだ価値があります。 AIが「見つける」、人が「伝わる」を判断する。
校正の主役は、AIでも、人でもありません。 “正しく伝わること”です。
AIと人、それぞれの強みを活かしながら、より確かな情報品質を実現する。それが、私たち大伸社ディライト校正室が考える、これからの校正です。
校正の仕組みづくりからAI活用まで、ぜひご相談ください。
次回は、「AI校正で減らせるミス、減らせないミス。」をテーマに、AIと人それぞれが得意とするチェックについて掘り下げます。AIが見つけるミスと、人が見抜くミス。その違いを知ることで、より効果的なAI活用のヒントをお届けします。ぜひお楽しみに。

CXマネジメント部 リーダー/校正ディレクター/プランナー
OKUBO YUKIKO校正チームの運営サポートを行っています。 デジタルやAI系メニューの開発では、最新の技術を常にキャッチアップし、お客様に最適なサービスを提供できるよう努めています。 また、社内外との連携を強化し、新たなリレーションを構築してより良い環境で仕事ができるよう取り組んでいます。