2020年08月03日
広報・販促ツール制作において、制作会社とやりとりのあるご担当者様や、簡単な制作物なら自社内で行う、という方にとって、画像データの手配や簡単な撮影を行うことは日常的にもよくあるかと思います。
ただ、それらが情報をきちんと「伝える」ものになっているか?デザイン要素として使いやすいものになっているか?となると、なかなか難しいかもしれません。
撮影ディレクションに携わることの多いアートディレクターの立場から、簡単なコツやアイデアをご紹介します。
例えば商品画像や、日々の記録用の画像を撮影する。
そういった場面においてもいくつかポイントを抑えて撮影することで、ツール制作上で使用する際に「扱いに困る…」といったことは無くなります。
・目的を整理する
・不要な要素は極力入れない
・できるだけ広範囲で撮影
・タテ/ヨコ両方で使用できるよう撮影
・トリミングができるよう必要要素を複数入れる
等々、挙げていくと沢山ありますが… 例えば商品等「モノ」を撮影する場合も、不要な要素が入らないようにしたり、画面に入る情報を極力整理することで素材として使いやすく、見せたいものがすぐに伝わる画像にできます。
「A」の画像でも、モノ自体を切り抜いてしまえば商品画像として使えなくもないですが、「B」のように最初から余計な要素を省き、すっきりした場所で撮影することで、そのままでも使えるような、使い勝手の良い画像となります。
被写体をどこまで入れるか、を調整することでも伝わり方は変わります。
例えば下の2つの画像。
「A」は料理自体に極端に寄ることで、「素材感」や「美味しさ」をダイレクトに伝えられると思います。一方、「B」のように引いた状態で撮影すると周りの環境もわかり、料理の美味しさより、「居心地の良さそうな空間だな」だとか「こんな場所で食事をしてみたい」といった感情を抱いてもらえるかもしれません。
ポイントにも挙げた画像としての「目的」に繋がるのですが、「何を伝えたいか」をまず整理することで写すべき被写体も変わってくると思います。
もう一歩踏み込み、シーンとして「演出」する撮影もあるかと思います。
例えば、会社案内や企業の広報物として「研修制度」を紹介する画像が欲しい、となったとします。ただ日常的に該当するような場面を記録しているわけではないので、その場合よく行うのはテーマを設定したシーンを「作り込んで」撮影するパターンです。要は簡単に演じる、ということです。
ただ、どのような設定にすれば伝わるのか?といった悩みに直面するとは思いますが、簡単にできる方法の1つとしては、まずネット検索で表現したいワードを打ち込んでみます。そうすると「ありがち」「それっぽい」と思われるイメージはほぼ見つかるとは思うので、それを参考に、できる範囲でシーンを作ってみます。ただここで注意が必要で、あくまでも参考にする、に留めイメージをそっくりそのまま再現してはいけません…。 著作権の観点からも、無断で使用したり真似ることはできないものが基本かと思うので、お気をつけください。
試しに、社内でもやってみました。
ステレオタイプかもしれませんが「A」のようにホワイトボード+人物というだけで「研修」の雰囲気は出ますがちょっと物足りない雰囲気もあります。そこに「B」のように聴衆者を思わせる人物も被写体として入れることで相互の関係性も見え、よりシーンとして「伝わる」演出ができるかもしれません。
実際のデザインプロセスにおいて私たちが行う場合には、事前の場所確認(ロケハン)や手描きのラフスケッチ等も用意し、イメージをより具体化させていきます。
また、レイアウトを前提とした対象物の配置や調整も行うので、単純に見えて奥深い世界といえます。
スマホの普及以降、今ほど「写真を撮る」という行為が身近になっている時代は無いでしょうし、カメラ精度もどんどん上がってきています。だからこそ、何となく美しい画像は撮れますが、ちょっとしたコツや意識を持つことで、より「伝わる」「機能する」画像を作ることができると思います。
私たちはプロとして、最良のビジュアルをご提供するべく、こうした画像要素1つとってもこだわりをもって企画・デザインを行っています。
アートディレクター / グラフィックデザイナー
谷川 徹カタログを中心としたアートディレクション・デザイン、グラフィック起点でのプランニングを行います。業種業態・規模を問わず、フラットな視点で課題と向き合いビジュアルへと定着させることを心掛けています。