2015年10月29日
大学業界を中心にツールやコンテンツの企画、制作ディレクションを担当しております古本です。皆さんはブランディングを考えるために有効な手法「クルースキャン」をご存知でしょうか?
大学業界というと、来たる少子化の影響を受けて、巷では2018年問題だなんだと騒がれております。ますます大学は「名前」で選ばれてしまうこれからの時代…大学ブランディングの重要性たるや、あえてここで力説せずともよいでしょう。
ただブランディングというのはなかなか難しいものです。なにせいろいろ考えることがありますよね。自大学をどう見られたいか、きちんとコンセプトを決めるのももちろん必要なわけですが、決めたコンセプト、世界観をいたるところで正しく発信できているか、を考えることもまた重要なのであります。(たとえばWebで発信しているメッセージや世界観が大学案内のそれとあまりにもかけ離れていたらまずいよね、という話です)
ただ実際問題、大学広報と入試広報、WEBもカタログもオープンキャンパスもそれぞれ担当者が異なるために、すべてを総合して検証することって難しいのが実情なんですよね。この「検証」を高校生目線で客観的に行える手法があるんです。
そう、それが「クルースキャン」。
米国生まれの手法であり、まだご存じない方も多いかもしれません。
クルースキャンとは、WEBサイト、印刷物、イベント、SNS…どのチャネルのどんな要因で、顧客がどんな感情になったのか。ターゲットとなる顧客像(=ペルソナ)の観点でブランドを形成する要因となる「手がかり」をみつけだすものです。
大学で言うと、大学案内やWEBサイト、オープンキャンパス、説明会、DM。自大学のターゲットとなる高校生(=ペルソナ)の観点でそれらのチャネルから「手がかり」をみつけだしていきます。
クルースキャンの専用キットがありまして、それを手に持って実際に高校生観点でチャネルを体験し、「手がかり」をメモしていくようなイメージです。
たとえば…下の図をみてください。
図:大学受験における高校生のカスタマージャーニーマップ
「学びたいことが明確だけど、情報収集に時間をかけたくない」という高校生(=ペルソナ1)をターゲットとする場合であれば
「大学案内の学部概要がうまくまとめられていて、学びの内容がすぐに理解できた」とか
「WEBサイトで資料請求を申し込む際、記入事項が多くて面倒だった」とか、
「オープンキャンパスで気になっているところだけ見て回りたいのに
任意参加型のイベントに強引に誘ってくる学生スタッフがいて困った」とか
ポジティブな体験、ネガティブな体験ふくめブランドを形成していくさまざまな「手がかり」が浮かび上がってきます。
「手がかり」がみつかっていくと、今度は一連の大学体験をふりかえった際に、正しくブランドが発信されているかどうかを下記の観点で検証することができます。
・一貫性(=チャネル全体を通してブランドらしい一貫した体験を提供できているか)
・連続性(=各チャネルが顧客シナリオに沿って分断せず、スムーズにつながっているか)
・文脈性(=各チャネルで顧客の置かれた状況や行動の前後関係を理解した対応ができているか)
・卓越性(=チャネル全体を通して、他では得られない良い体験が提供されているか)
この図(=カスタマージャーニーマップ)をふまえると、どうすればターゲットの高校生にとって理想の「大学体験」を提供できるのか、また自大学が発信したい世界観を提供できるのかを考えやすくなります。
……いやー難しいですよね。でもこのクルースキャン、やってみると顧客(高校生)側での気づきが色々あって結構面白いんです。実際にやってみないとわからないだろうということで、このたび心斎橋ハートンホテルにて大学担当者をお招きして、クルースキャンを体験するセミナーを開催してまいりました。
セミナーはオムニチャネルマーケティングで成功しているといわれる大手雑貨量販店さんを題材にクルースキャン。みな実際に買い物をしてもらって、そこで感じたいろいろな気づきをグループ内でシェアします。
「店頭でその場で在庫確認できるアプリはすごいなと思ったけど、実際には商品のバーコードが見つけづらくって、アプリの良さを生かしきれていない部分がある」「レジで店員さんに会員カードの提示を求められたけど、アプリの画面提示までは求められなかった。アプリを推しているわりにあまり一貫性がないなぁ」など。そして一貫性、連続性、文脈性、卓越性の観点でブランドを評価していきます。
皆さん、楽しみながら体験していただきました。気づきをチームで共有でき、それに対してどのように改善していけばいいかを話し合いやすいというのがミソだなーと思います。
…とまあ、こんな具合にですね、大伸社ディライトではペルソナ開発からクルースキャン、カスタマージャーニーマップの開発、それらをふまえてどのような世界観で施策に展開していくかまでも含めて大学様の広報活動を支援しています。(グループ会社であり、ペルソナ開発実績も豊富な株式会社mctとの共同プロジェクトとなります)
今度は東京でもセミナーやりますよ~ではでは。
CXデザイン部 次長
古本 真己ユーザーヒアリングを通じて、Web/冊子/動画などジャンルを問わずコンテンツの企画・構成・編集までを行うコンテンツ企画制作ディレクター。 近年はマーケティングファネル上の課題を抽出し、リード獲得からリード育成まで全体を俯瞰して戦略を立案、施策の実施、成果検証まで一貫して担当。PJT全体をプロデュースから運営・ディレクションまでを担うPMとして参画させていただくことが多いです。