2025年12月24日更新
「新製品のスペック表、Webサイトは更新したけれど、アプリ側の更新を忘れていた」
「セキュリティアップデートのたびに、サイト表示が崩れないかヒヤヒヤする」
「多言語展開をしたいが、管理画面が複雑になりすぎて手が出せない」
もし、あなたが日々こうした悩みを抱えているなら、それは担当者のスキル不足ではなく、「システム構造の限界」かもしれません。
製品点数が多く、正確な情報発信が求められる企業のWeb担当者の間で、今、「ヘッドレスCMS(Headless CMS)」という選択肢が急速に注目を集めています。
今回は、流行のバズワードとしてではなく、「業務効率とセキュリティを根本から変えるための現実解」として、ヘッドレスCMSの正体を分かりやすく解説します。
従来のCMS(コンテンツ管理システム)とヘッドレスCMSの最大の違いは、「見た目(Webページ)」を持っているかどうかです。
記事や商品データを管理する「裏側」と、それをWebページとして表示する「表側(ヘッド)」がセットになっています。
イメージ: 「お店(客席)」と「厨房」が一体化したレストラン。お客様は必ずその店に来て食事をします。
「表側(ヘッド)」を持たず、コンテンツ(データ)の管理機能だけに特化しています。 データはAPI(※)という接続口を通じて、Webサイト、スマホアプリ、スマートウォッチ、店舗のサイネージなど、あらゆる場所に配信されます。
イメージ: 「ゴーストキッチン(厨房のみ)」。料理(コンテンツ)を作りさえすれば、UberEatsでも、テイクアウトでも、パーティ会場へのケータリングでも、どこへでも届けられます。
※API(Application Programming Interface) 異なるソフトウェア同士が情報をやり取りするための「窓口」や「接続コネクタ」のこと。ここでは「CMSからデータを取り出すための専用回線」とイメージしてください。

「便利だったはずの機能」が足かせになる瞬間
多くの企業が導入している従来型CMSは、テンプレートに文字を入力すればすぐにページができるため、非常に便利です。しかし、企業の規模が大きくなり、情報のチャネル(発信場所)が増えるにつれて、その構造がデメリットに変わることがあります。
「Webサイト用」に作られたシステムであるため、同じ情報をiOS/Androidアプリや、会員限定ポータルサイトに流用しようとすると、大規模な改修が必要になります。
「見た目」を作る機能が含まれているため、システム自体がインターネット上に広く露出しています。プラグイン(拡張機能)の脆弱性を突かれ、サイトが改ざんされるリスクと常に隣り合わせです。
機能が増えるほどシステムが重くなり、ページの読み込み速度が遅くなります。これはユーザー体験を損なうだけでなく、Googleの検索評価(SEO)にも悪影響を及ぼします。
「ワンソース・マルチユース」の実現
特に、数千〜数万点の製品を抱える製造業や、複数のブランドサイトを展開する企業にとって、ヘッドレスCMSは「情報の一元管理(ワンソース・マルチユース)」を実現する強力な武器になります。
例えば、ある製品の「耐熱温度」の仕様が変更になったとします。
Web担当者が製品ページを修正し、カタログ担当者がデータを修正し、アプリ担当者に連絡して修正を依頼する…。これでは転記ミスや更新漏れ(先祖返り)が高い確率で起きます。
大元のデータベースで数値を1箇所修正するだけ。APIを通じて、Webサイト、アプリ、販売代理店向けポータルサイトなどの全ての表示が瞬時に、自動的に書き換わります。
また、セキュリティ面でも強みがあります。ヘッドレスCMSは「表示画面」を持たないため、Webサイト自体を静的なファイル(ハッキングされにくい単なるHTMLファイルの状態)として書き出す構成をとることが多く、攻撃の対象になりにくいという特徴があります。

今回の記事で、Headless CMS(ヘッドレスCMS)という選択肢について、少しイメージが湧いてきたでしょうか。
要点を整理します。
これからのWeb担当者に求められるのは、「どうやってページを作るか」ではなく、「企業の資産である情報を、どうやって安全かつ効率的に管理・配信するか」という視点です。ヘッドレスCMSは、そのための現代的なインフラと言えるでしょう。
「概念はわかったけれど、実際に導入するとどうなるの?」「既存のシステムからどうやって移行するの?」 次回は、より具体的な「Headless CMSの活用事例と、導入前にチェックすべきポイント」について解説します。自社にフィットするかどうかの判断基準が見えてくるはずです。お楽しみに!

CXマネジメント部 次長
板岡 貞治大手工作機械メーカー様において、長くディレクターとして担当させていただいた経験から、生産財系メーカー様特有の販促課題の発見・抽出〜解決までをプロデュースします。製造現場の把握を背景にしたコンテンツプランから撮影・CGも含めたコンテンツ制作まで、一貫した制作体制をご提供します!